喉ニ小骨ガ

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「一分間のラブストーリー」
朝から、プリン。


朝から、プリン。 本編

2009.12.23  *Edit 

 今日は、朝からプリン。
 テーブルには、炊き立てご飯と、焼いた鮭の切り身と、ほうれんそうの胡麻和えと、半熟玉子と、味付け海苔と、お手製のぬか漬けと、あとは具だくさんのお味噌汁が手つかずで並んでいて。
 ……なのに、プリン。
「あ、これ美味いなぁ。新作のとろけるショコラ。秋限定の和栗も良かったけど」
 テーブルを挟んだ向こう側で、ぶつぶつ言いながら一心不乱にプリンをむさぼるのは、半年前に結婚したばかりの旦那さまだ。彼はとっても優しいから、ときどき仕事帰りにプリンを買ってきてくれる。
 プリンは、私の大好物。舌の上に広がる滑らかで濃厚な甘みは、私をトリコにする。
 でも、その後にやってくるのは……苦過ぎる、真っ黒なカラメル。
「なんかいっくん見てたら、“釣った魚に餌はやらない”って言葉の意味が分かったかも」
「な、なんだよ……」
「餌は、自分で食べちゃうんだよね。そうやって、美味しそうに」
 ふくれっ面を作る私の前に、おずおずと食べかけのプリンが差し出される。
「――要らない」
「いいから食えよ」
「もう食べられないもん」
 チラリ、と視線を斜め前に向ける。そこには、私が平らげたばかりの空容器が三つ。ノーマルなバニラと、生クリーム入りと、黄色いかぼちゃ味。おかげで栄養たっぷりの和定食には、そのままラップがかけられることになりそうだ。
「……私がこれ以上太ったら、いっくんのせいだからね」
 自分で食べたくせに、というクールな天使からのツッコミは無視。全部アイツのせいだ、という悪魔の指令に従い、私は“イイガカリ”という名の変化球を容赦なく投げつける。打席に立った彼は、バントで球の勢いを殺して応戦。
「いいよ、太っても。俺どっちかっていえば、ぽっちゃりした女の子の方が好みだし」
「ふーん、じゃあ昨日のお相手は、そういうタイプだったんだ?」
 カーブに目が慣れたところで、直球の剛速球。さすがに打ち返せなかった彼は、とっさに顔を伏せてその危険球を避け、そのままとろけるショコラちゃんとの対話に戻った。
 彼の仕事はバーテンダー。ときにはうら若き女性のお一人様も訪れる、小粋な失恋レストラン。
 それにしても、酔ったお客さんを介抱していて唇を奪われるなんて……隙を見せるにも程があるんじゃない?
 しかも、プリンさえあれば私の機嫌が取れるなんて、大きな誤解!
「……なあ、もうこれ食べていい? 俺腹減ったー」
 ショコラちゃんを美味しく召し上がった彼が、叱られた子犬みたいに眉尻を下げながら私を見つめてきた。私は、声のトーンを少しだけ上げる。
「次回の“朝プリン”のご予定は?」
「もう無い、です……」
 ふぅ、と大きな溜息を一つ。
 半年前に約束したのは、お互い『隠し事をしない』こと。
 だから、すっごくすっごくムカツクけど……こうしてプリンも買ってきてくれたことだし、今日のところは許してあげる。
 どうか私を、内緒で携帯チェックするような奥さんにはさせないでね?
 私は彼の手を取り、小指をギュッと絡ませた。

「――嘘ついたら、とろけるプリン千個、飲ーますっ!」


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【後書き】補足&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたい方のみ反転を。
(携帯の方は「テキストコピー」でたぶん読めます)
 久々に書いた、一分間のラブストーリーシリーズです。このシリーズは、何気ない日常の中で愛を感じる……そんな百物語を作りたいなぁと。100個溜まったら、約200~300枚なので、どっかの長編公募に応募出来ちゃうかもー。(←まだ6個目。ちなみに過去作品は、現在掌編の公募に参戦中につき降ろしてます)
 さて、今回の作品ですが、仲良しチャーミーグリーンな知人にインスパイアされました。「毎度のろけやがってこのルクプルめー! 『ひだまりの歌』うたったるわー! こちとら日陰で震えっぱなしやっちゅーねん!」……なんて思ったわけではありません。クリスマス前の寒い夜、マッチを擦ったらこの話が出て来ただけです。自分そんなに黒くありませんから……たぶん。昭和ネタを一個補足。『失恋レストラン』……知らない人が居たら、親御さん世代に聞いてみてください。歌ってくれます。もしくは『ガラスの仮面』を読んでみてください。痛々しい気持ちになれます。



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~ Comment ~

おや、可愛い! 

女の子、ではないけど、そういう雰囲気の奥様からの‘嫉妬’って可愛いですな(^^)
なんだかんだ言っても、のろけてるんじゃん、という明るい雰囲気が良かった!
なんだか、明るい食卓の風景がテレビ画面のように見える気がしました。

Re: おや、可愛い! 

>fateさん

いつも貴重なコメありがとです☆
この作品は知人夫婦をイメージして書いたのですが、実は本人とリアルで会う前に書いた妄想の産物ででした。
「このリア充め! 小説の中で恥ずかしめてやる!」という呪いがかかってますので、ご注意をw
(実物と会った後だったら……たぶんこんな砂糖吐く話は書けなかったな……)
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