喉ニ小骨ガ

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「その他掌編」
ミレニアムベビーな魔王さま!


ミレニアムベビーな魔王さま! 本編

2010.12.13  *Edit 

「――みにゅっ!」
 玄関に入った瞬間、珍妙な叫び声が響いた。
 靴の下に柔らかな感触。見下ろせば、亀のように蹲《うずくま》る少女の尻があった。
 またか、と勇は嘆息する。
「うー、痛いぞユゥ」
「こんなとこで亀の真似してるお前が悪い」
「亀ではない! これはパパ王から姿を隠す『石ころ魔法』じゃ」
「いいからどけって、まお」
「まおではない! わらわの名は『魔王』じゃっ」
 すっくと立ち上がり、膨らむ兆しの見えない胸を誇らしげに張るまお。体操着にピンクのキュロット、背中には赤いランドセル。腰に手をあて不遜な態度をとるものの、勇との身長差は約四十センチ。上目遣いに睨みつける瞳は、子犬のように愛くるしい。
「ハイハイ、どいて下さいまおー様」
「うみゅっ、気安く、わらわの頭を、わしわしと、撫でるなっ」
 中華饅に似た小さな手が、勇の腹をポコポコ殴る。と、腹の虫がキュルッと降参の音を立てた。
「やめろって。俺腹減って死にそうなんだよ。邪魔するとお前を食っちまうぞ?」
「たわけ、ユゥごときに容易く食われるわらわではないわっ」
 するんと流れるおかっぱ頭を傾げ、ニイッと笑うまお。グーになっていた手は、いつの間にか勇の右腕に絡みついている。
「ったく、変な言葉ばっか覚えやがって……」
 二〇〇〇年一月一日ジャストに生まれたまおは、満十歳にして完全な中二病患者である。原因はまおの父親だ。高名なラノベ作家の彼は、愛娘に『魔王教育』を施すほどの末期患者《アホ》だった。
「で、また親子喧嘩《バトル》したのかよ」
「な、何のことじゃ? わらわは、お主の不幸を予言しに来たのじゃ」
「不幸?」
「だが、えれう……うれる……うれう……」
「憂える?」
「そう、うれるでないぞ。ユゥには、その不幸以上の幸福が約束されておるからの」
「ふーん、良くわかんねーけど腹減った」
 勇は靴を脱ぎ捨て、廊下を抜けてリビングへ。右腕にぶら下がるまおを、制服のブレザーごとソファに放り投げる。
 冷蔵庫を開くと、いつも通りささやかなオヤツが用意されていた。今日はまおの大好物・チョコパイだ。
 まおの隣に陣取った勇は、早速円盤状のパイを頬張る。
「あっ……」
「もぐもぐゴクン……ん? 何だ?」
「それ、わらわの好きな……」
「欲しいなら『ください』って言えよ」
「く……おのれユゥ、わらわが下手にでればいい気になりおって」
「あっそ、じゃあ全部食っ」
「――くださいっ!」
 勇は三日月型に変わったチョコパイを、まおの口元に差し出した。反射的に、はむっとかぶりつくまお。
「で、本当はパパに悪戯したんだろ? 一緒に謝ってやるよ」
「違う……わらわはただ、この予知力で見た、全ての未来を、告げてしまっ」
「あー、喋るのは食べた後でいいって」
 三日月がみるみる欠け、ついには新月になったところで餌付けタイム終了。名残惜しそうな顔をしたまおが、勇の指先をチュパッと咥えた、刹那。
「――まおぉぉ、パパが悪かったぁぁ!」
 ピシリ、と空気が凍りついた。
 勝手知ったる隣家にスライディング土下座で飛び込んできた男が、悪鬼の形相でゆらりと立ち上がる。
「おのれ勇……いたいけなまおに、邪悪調教《バッド・コミュニケーション》を行おうとは!」
「待て! 何の話だッ?」
「十年後ならまだしも、今は許さん! 変態成敗《ロリコン・デストロイ》ッ!」
 バトル勃発!
 烈火のごとく猛り狂い、手狭なリビングを暴れまわる四十路男。その右腕に宿る娘溺愛魂《ウルトラ・ソウル》が、勇の身体を軽々と吹っ飛ばし……。
 ――パキャン!
「ああっ、母さんの大事な一輪挿し《カビン》が!」
 魔王の予言は当たった。母のネチネチお小言を覚悟し、勇はがっくりと項垂れる。
「す、スマン勇君。おじさんが弁償を……」
「パパ王、ここはわらわにお任せを」
 激しいバトルの最中、ソファの陰に避難していたまおがピョコンと頭を覗かせた。勇に駆け寄りランドセルを差し出す。中に収まっていたのは、教科書ではなくミニ箒&ちりとり。
「……随分用意がいいな」
「フフン。わらわには全てお見通しじゃ。ほら、あれを見よ」
 まおの指が、陶器の破片の一角を示した。
 そこには、キラキラと輝く銀の輪。
「これ、母さんが無くしたって騒いでた結婚指輪……」
 屈み込んだ勇は、まおを至近距離からまじまじと見つめた。
「さっきの予言……“幸福が約束されてる不幸”って、このことか?」
「さぁな。わらわの予言は解釈しだいじゃ」
 シシシッと無邪気に笑う、小さな魔王。
 ぼんやりとまおに見入ったままの勇に、再びパパ王の鉄拳が炸裂した。

 数年後――
 背だけはそこそこ育った偉大なる魔王が、セーラー服の胸を誇らしげに張る。
「知らぬのかユゥ、魔王からは逃げられないのじゃ」
 眼下には、愛らしくも不敵な笑み。庭先から迫りくる「おのれ勇ぅぅ!」というパパ王の咆哮。観念した勇は、苦笑と共にまおの頭をわしわしと撫でた。
 その後、パパ王の猛攻に耐えて永遠の忠誠《アイ》を誓い、母の指輪を差し出した勇が、世界の危機を救うべく奔走するのは……また別の話。 (了)


※以下、おまけの『初稿バージョン』です。勇→公太という名前で、もうちょい野獣系男子になってます。名前短縮&チョコパイシーンを削って、パパ王バトル(ルビw)を増やしたのが完成版。うーん、これどっちにしろ尺足りなry


「――みにゅっ!」
 玄関に入った瞬間、珍妙な叫び声が響いた。
 靴の下に柔らかな感触。見下ろせば、亀のように蹲《うずくま》る少女の尻があった。
 またか、と公太は嘆息する。
「うー、痛いぞコータ」
「こんなとこで亀の真似してるお前が悪い」
「亀ではない! これはパパ王から姿を隠す『石ころ魔法』じゃ」
「いいからどけって、まお」
「まおではない! わらわの名は『魔王』じゃっ」
 すっくと立ち上がり、膨らむ兆しの見えない胸を誇らしげに張るまお。体操着にピンクのキュロット、背中には赤いランドセル。腰に手をあて不遜な態度をとるものの、公太との身長差は約四十センチ。上目遣いに睨みつける瞳は、子犬のように愛くるしい。
「分かった分かった、どいて下さいまおー様」
「うみゅっ、気安く、わらわの頭を、わしわしと、撫でるなっ」
 中華饅に似た小さな手が、公太の腹をポコポコ殴る。と、腹の虫がキュルッと降参の音を立てた。
「やめろって。俺腹減って死にそうなんだよ。邪魔するとお前を食っちまうぞ?」
「たわけ、コータごときに容易く食われるわらわではないわっ」
 するんと流れるおかっぱ頭を傾げ、ニイッと笑うまお。グーになっていた手は、いつの間にか公太の右腕に絡みついている。
「ったく、変な言葉ばっか覚えやがって……」
 二〇〇〇年一月一日ジャストに生まれたまおは、満十歳にして完全な中二病患者である。原因はまおの父親だ。高名なラノベ作家の彼は、愛娘に『魔王教育』を施すほどの末期患者《アホ》だった。
 そして、まおが公太の家に逃げ込むときは、必ず理由があるのだ。
「で、今日は何やらかしたんだよ」
「な、何のことじゃ? わらわは、おぬしの『不幸』を予言しに来たのじゃ」
「はぁ?」
「だが、えれう……うれる……うれう……」
「憂える?」
「そう、うれるでないぞ。コータには、その不幸以上の幸福が約束されておるからの」
「ふーん、良くわかんねーけど腹減った」
 公太は靴を脱ぎ捨て、廊下を抜けてリビングへ。右腕にぶら下がるまおを、制服のブレザーごとソファに放り投げる。
 冷蔵庫を開くと、いつも通りささやかなオヤツが用意されていた。まおの大好物・チョコパイだ。
 まおの隣に陣取った公太は、早速円盤状のパイを頬張った。
「あっ」
「もぐもぐゴクン……ん? 何だ?」
「それ、わらわの好きな……」
「欲しいなら『ください』って言えよ」
「く……おのれコータ、わらわが下手にでればいい気になりおって」
「あっそ、じゃあ全部食っ」
「――くださいっ!」
 公太は、満月から三日月型に変わったチョコパイを、まおの口元に差し出した。反射的に、はむっとかぶりつくまお。まさに餌付け状態だ。
「で、本当は何したって? 一緒に謝ってやるから言ってみ?」
 三日月がみるみる欠け、ついには新月になったところで、まおは満足げに微笑んだ。大福ばりに白く柔らかな頬っぺには、見事なチョコの線。
「うむ……実はわらわは、開花しつつあるこの『予知力』を制御できず、パパ王に全ての未来を告げてしまっ」
「まお、動くな」
「ふぇ?」
 オヤツを半分しか食べられなかった、健全な高一男子である公太。本能の赴くままに、まおの頬に舌を伸ばした時。
「――まお、パパが悪かった!」
 その瞬間、空気が凍りついた。
 勝手知ったる隣家に飛び込んできた男は、愛娘の姿を見るや悪鬼の形相で叫ぶ。
「おのれ公太……まおの唇を奪おうとは!」
「ちょっ、待て!」
「許さん! 変態成敗《ロリコン・デストロイ》ッ!」
 バトル勃発!
 烈火のごとく猛り狂う男が、手狭なリビングを暴れまわる。育ち盛りの公太とはいえ、娘可愛い盛りの四十路男子に敵うはずがなく……。
 ――パキャン!
「ああっ、母さんの大事な一輪挿しが!」
 魔王の予言は当たった。母のネチネチお小言を覚悟し、公太はがっくりと項垂れる。
「す、スマン公太君。おじさんが弁償を……」
「パパ王、ここはわらわにお任せを」
 激しいバトルの最中、ソファで一人ぽーっとしていたまおが息を吹き返した。
 公太の傍に寄り、ランドセルを差し出す。中に収まっていたのは、教科書ではなくミニ箒&ちりとり。
「……随分用意がいいな」
「フフン。わらわには全てお見通しじゃ。ほら、あれを見よ」
 まおの指先が、陶器の破片の一角を示した。
 そこには、キラキラと輝く銀の輪。
「これ、母さんが無くしたって騒いでた結婚指輪……」
 屈み込んだ公太は、目線が対等になったまおを、至近距離からまじまじと見つめた。
「さっきの予言……“幸福が約束されてる不幸”って、このことか?」
「さぁな。わらわの予言は解釈しだいじゃ」
 シシシッと無邪気に笑う、小さな魔王。
 ぼんやりとまおに見入ったままの公太に、再びパパ王の鉄拳が炸裂した。

 十年後――
 背も胸もすくすくと育った、偉大なる魔王。
 パパ王の猛攻に耐えて永遠の忠誠《アイ》を誓い、母の指輪を差し出した公太が、世界の危機を救うべく奔走するのは……また別の話。


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