喉ニ小骨ガ

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「春夏秋冬」
春 ~理久の章~


番外編2~恋ノ蕾(5)~

2010.09.20  *Edit 

 カフェを飛び出す清水を見送ってからの私は、酷く冷静だったと思う。
 高ぶった熱が一気に冷め、凍えた心は全ての感情を麻痺させた。私は元来た道をゆっくりと歩きながら、去年の夏を思い出していた。
 受験生だからお祭りに行くのは控えて、代わりにうちの庭で家族だけの花火大会をした。お父さんがやけに張り切って、ホームセンターで五千円もする特大パックを買ってきた。お母さんはスイカを切って、千晶ちゃんはバケツに水を汲んだ。私は引き出しの奥にあった、お気に入りのアロマキャンドルを一つおろした。
 花火は、楽しいのに切ない。
 導火線に火をともせば、皆満開の笑顔になる。でも心の片隅で感じている。これは『終わりの始まり』だと。
 煌びやかな光を堪能し、最後はお約束の線香花火。自然と口をつぐんで膝を突き合わせ、輝くオレンジの花に目を細める。小さく優しく、煙の香りが立ちのぼる。
『楽しい時間はそろそろおしまい』
 私たちに囁きかけるように、儚い命の炎を燃やし、赤く熱い雫がぽたりと地面に落ちる……それが夢から覚める合図。
 今も、あの花火と同じだ。私にとっての、夢みたいな時間は終わった。
 清水が最後に誰を選ぶかなんて、充分過ぎるほど分かっていた。
 子どもみたいに「行かないで」と泣き叫んでも、きっと清水の答えは覆らない。そう察した私は、黙って清水を見送った。さも物分かりが良さそうな、『いい子』の笑みさえ浮かべて。
 私が何も気付いていない振りをして、アンドロイドの顔で笑えば、皆も笑ってくれるのはセオリー。清水だって例外じゃない。
 私の本心に気付いてくれる人なんて、誰もいない。
「そうだよ、いつものことじゃん……」
 諦めが早いのも、私の身に付けた大事な武器だ。呪文を唱えるように「大丈夫大丈夫」と何度も呟きながら、私は家路を急いだ。行き道には私を惑わせた、見知らぬ雑貨屋やレストランに一瞥もくれず、太陽の沈む方向へ。
 くたびれ切って重たい身体を引きずり、なんとか家に辿りついた。玄関のドアを開くと、キッチンから「おかえり千紘ー、もっと遅くなるのかと思ってたのに」とお母さんの声。私はろくな返事もせず部屋に向かうと、ベッドへ倒れ込み、お日さまの匂いのする枕に顔を埋めた。
 唇から漏れた声は、誰にも届くことは無かった。

 心にダメージを受けたとき、必ず熱を出す。それは私と千晶ちゃんに共通する、子どもの頃からの癖。
 まんまと風邪を引いた私は、週末をベッドの中で過ごした。
 こんな日に限って、お母さんは地域の会合で忙しく、お父さんはいそいそと競馬に出かけてしまった。千晶ちゃんは予定を返上して、家に残ってくれた。
「ん……少し下がったけど、まだ熱あるみたいね」
 冷え性な千晶ちゃんの手のひらが、火照ったおでこにさらりと触れる。私は熱でぼやけた視界の中、千晶ちゃんの仕草や表情を観察した。
 私より一足先に大人になった千晶ちゃんは、あの癖をしっかり克服したらしい。何事にも動じない清水を、あれだけ慌てさせるような“事件”があったはずなのに、まるでリクちゃんみたいなポーカーフェイス。たぶん私が「昨日何かあった?」と尋ねたところで、笑顔ではぐらかされてしまうだろう。それよりも「千紘こそ何かあったんでしょ?」なんて切り返されてしまうのが怖い。
 問いかけの代わりに、千晶ちゃんの顔をじっと見つめてみたけれど、成果は無し。双子は言葉が無くても通じ合えるなんて、嘘だ。私に千晶ちゃんの感情はちっとも読めない。
「夕方まで寝てていいよ。玉子のおかゆ作っとくね」
 そう言って微笑む千晶ちゃんは、凛として咲き誇る百合の花みたいに綺麗だった。僻むのもバカらしいくらい圧倒的で、自信に満ちた……世界最強の笑顔。
 誰にも弱みを見せず、決して弱音を吐かない。相手が身内ならば、なおさら心配をかけまいとする。それが千晶ちゃんの身に付けた武器だ。
 私には、こんな風に微笑む強さなんて無い。
 労わるような眼差しも、ふわりとおでこを撫でる手も、柔らかな言葉も……私に向けられる優しさの全部が痛くて、私は黙って目を閉じた。
 千晶ちゃんがそっと部屋を出て行った後、私は枕の下から携帯を取り出した。あのカフェを出てから届いたメールを、もう一度順に追っていく。
『おーい、大丈夫か? 具合悪くなったって、お店の人から聞いたけど』
 私は『ごめんね、風邪引いちゃったみたい。今家で寝てる』と簡素な返事をした。
 店員さんには、伝言なんて頼んでいない。きっと私の様子を見て、機転を利かせてくれたのだろう。熱が下がったら、お礼を兼ねてケーキを買いに行こう。
『そっか、お大事に。ていうか、こっちがおごるはずが、二人分払わせてスマンかった! この埋め合わせは絶対するから、元気になったら連絡くれ』
 そこから先は、中身の無いくだらないメールで埋め尽くされている。発信者は主に清水と、かしましい学校の友達。多用された絵文字と行間から、私を元気づけようという心遣いが伝わってくる。
 でも今は、それさえも辛い。
 私は携帯を閉じ、まどろみに身を委ねた。

 ◆

『先週はゴメンね。熱はもう下がったし、ちゃんと学校来たよ。埋め合わせは、そのうちよろしく』
 降り立った駅のホームで送信ボタンを押し、私は大きく息をついた。たった三行のメールを打つ間に、電車は私を目的地へ運んでいた。メールの文面に頭を悩ませていたおかげで、独りぼっちの通学電車も寂しさを感じずに済んだ。
 見上げた空は快晴。朝の占い結果もなかなか良好。何だか今日はイイコトがありそうだ。
 眩しい太陽に背中を押され、私は学校へ向かい歩きだした。いつものお下げを解いて、千晶ちゃんみたいに背中へそのまま垂らした。長い髪は身長を低く見せるから、しゃんと背筋を伸ばして、しっかり前を向いて。
 学校についたら、真っ先に清水のことを聞かれるだろう。私の体調を気遣いながらも、『デート』の結果報告を催促するメールに対して、『来週、学校で話すね』としか伝えていないから。
 これは私にとって、避けられない戦いだ。笑顔のままクリアできたなら、また私の勇者レベルが一つ上がるはず……。
 ギュッと握りこぶしを作ったとき、携帯が震えた。清水からだ。
『おお、元気になって良かった。こっちもいろいろ悪かったな。また今週末も練習試合あるし、顔出してくれたら現金で渡すけど、どーする? もちろん、それとは別に埋め合わせもキッチリするから!』
 メールの行間から、清水の気持ちが透けて見えた。
 きっと清水には追い目がある。私を置いて行ったことだけでなく、私が体調を崩したことまで自分の責任に感じている。『体調が悪い中、無理に呼び出してしまった。それは前日遅くまで試合につきあわせたせいだ』くらいに。だから「応援に来て欲しい」と素直に言えず、私に判断を委ねるような表現にした……そんな気がする。
 餌を前にあおずけ状態で、尻尾だけをパタパタ振るワンコ。
 好き勝手なイメージをし、私は一人笑った。

 教室に入ると同時に、仲良しグループのメンバー四人が私に駆け寄ってきた。「風邪大丈夫?」と口にしながらも、皆の瞳は好奇心いっぱいにキラキラ輝いている。私は黒板の上にある丸時計を見やり、朝のホームルームまでの時間を確認。ゆっくり話している暇はなさそうだ。
 とりあえず席に着き、辞書が入って重たい鞄を机の脇に掛ける。その間、皆は私の席の近くから勝手に椅子を引っ張り出し、膝を突き合わせる形で私を取り囲んだ。また去年の花火を思い出すけれど、これから始まるのは決して楽しいイベントじゃない。
 それでも私は、感じていた。これは『終わりの始まり』なのだと。
 私は皆に、全てを打ち明けるつもりだった。
 おバカさんでちょっと鈍くて、いつもニコニコしているポジティブな子……そんな演技は、もうおしまい。
「あのね……残念ながら、皆の想像したようなことは無かったよ。清水の『話したいこと』は、これから部活の朝錬に出るから、一緒に通えなくなるって。あとね、実は私、皆に一つ隠してたことがあって――」
 私は俯き、焦げ茶色の机の片隅を見つめた。そこには授業中にこっそり描いた犬の落書き。げじげじ眉毛で舌を出すワンコに励まされ、私はなんとか言葉を紡いだ。
 元々清水は、双子の姉を好きだった。卒業前に玉砕し、今は清水も吹っ切れたように明るく過ごしている。そして、清水が私と一緒に通学していた理由は、姉から「千紘を守って欲しい」と頼まれたからで……。
「ほら、私ってこの通り、ぼーっとして危なっかしいでしょ? それに比べて、千晶ちゃんは正反対なの。強くて、賢くて、優しくて……だから私は」
 勝てるわけがない。
 呟きかけた言葉が、喉の奥に引っかかった。私のささやかなプライドが、それだけは口にしたくないと抵抗する。皆も言葉を失い押し黙る。
 徐々に騒がしさを増す教室の中、この一角だけがお通夜みたいに静かだった。
 私は軽く頭を振り、ネガティブな思考を遠くへ追いやった。顔を上げ、無理やり笑顔を作ってみせる。
「私は、平気だよ。学校くらい一人で通えるし、清水のことも“友達”として、今まで通り仲良くしていくし」
 そう、きっと何も変わらない。
 千晶ちゃんは優しいお姉ちゃんのままで、私は遠ざかる背中を見つめ続ける。清水とのくだらないメールのやりとりも続いていく。請われれば、試合の応援にだって出かけるだろう。
 ただ……清水と二人きりになるのは、何となく怖い。想像するだけで、心の芯がすうっと冷えていく。夜の学校に独りきりの方がまだマシかもしれない。次の日直からは、自力で乗り切ろう。試合の後も、清水に送ってもらわないですむように、何か予定を入れなくちゃ。
 また思考が飛んでしまった。私は皆との会話に意識を戻し、はは、と乾いた笑い声を立てた。
「……って感じ。あまり楽しくない話でごめんね」
 私に集中していた視線が解け、四つ分の溜息が漏れる。
 と、皆の中心人物である葵ちゃんが、鋭い眼差しを向けてきた。入学初日、あの『怪談話』を持ちかけときと同じ、薄い唇を引き結んだ上目遣いの三白眼で。
「あのさあ、千紘の話すっごい良く分かるよ……うちにも、優秀なお兄ちゃんが居て、いっつも比べられてるからさ」
「そーなんだ? お兄さんの話って初耳」
「言いたくなかったの。あたしアイツ大嫌いだから」
 字面だけを追うとキツイのに、私も皆もつい笑顔になってしまうのは、それが愛情の裏返しと分かったから。顔をくしゃっと歪めて、大げさなくらい首を横に振るしぐさは、本当の『嫌い』とは違う。これがもしメールなら、信じたかもしれないけれど。
 やっぱり相手の顔を見て話すのは大事だな、なんて、当たり前のことをぼんやり考えていると……葵ちゃんの囁き声が、胸の奥へするりと滑り込んできた。
「でも千紘は、それでいいの?」
「葵、ちゃん……?」
「今まで通りで、いいの? お姉ちゃんとも清水君とも、このままでいいの?」
 ズキン、と胸が痛んだ。
 追い詰められた私に、神様が救いの手を差し伸べるように、ホームルーム開始のチャイムが鳴った。

 ◆

 帰り道、地元の駅に降り立つと同時に、食いしん坊な私のお腹がきゅるんと鳴った。百パーセント元気になった証だ。
「そーだ。あのカフェでケーキ買って帰ろ」
 頭の中に、食べ損ねてしまったチョコケーキが思い浮かぶ。同時に現れた苦い思い出は、心の奥に閉じ込めて、美味しい食べ物のことだけを考える。
 こんなに早く体調が戻ったのは、千晶ちゃんお手製の玉子がゆのおかげかもしれない。あまりの美味しさに驚いてレシピを聞いたら、千晶ちゃんはしぶしぶ教えてくれた。
 味の秘密は、レシピじゃなくて材料の方。わざわざ遠くの高級スーパーへ出かけて、一パック千円の卵を買ってきてくれたのだ。自然の中で放し飼いにされている鶏の、貴重な卵。
『もともと食べ物には、病気を治すパワーがあるんだよ』
 台所に立ち、手早く片づけものをしながらサラッと告げた千晶ちゃんは、どんな男子より男前で……思わず千晶ちゃんに飛びつき、「ありがとう、大好き!」と愛の告白をしてしまった。
 昔からそうだ。倹約家な千晶ちゃんの財布の紐は、こういうときに緩む。私や家族の誕生日とか、リクちゃんへのプレゼントとか。しかもお金に頼るだけじゃなく、自分の愛情も目一杯込めてくれる。
 今日のお弁当も、いつにも増して栄養と愛情たっぷりだった。千晶ちゃんは毎日早起きして、お母さんと一緒に皆の分のお弁当を作ってくれる。それが手際も良いし味も抜群だから、私は甘えまくっている。
 私もお料理は好きだけれど、もたもたしていろんな失敗をする。材料を零したり、分量を間違えたり。だから先週のパウンドケーキも、レシピ本とにらめっこしながら丁寧に作った。サッカー部の人たちが、口々に「美味しい」と言ってくれたのは、単にお腹が減っていたせいと分かっていても嬉しかった。
「そうだよね……私と千晶ちゃんは、やり方が違う。勝ち負けを考えるなんて、おかしいよね?」
 斜め下を歩く自分の影に話しかけ、うんうんと頷く独り芝居。私は「バカみたい」と自嘲した。
 今朝葵ちゃんが放った火種は、私だけじゃなく皆の心にも飛び移った。休み時間もお昼も放課後も、普段とは打って変わって真面目な告白が続いた。中学のとき軽いいじめにあっていたとか、治らない病気を抱えているとか、両親が不仲だとか。告白が一つ落とされるたびに、私たちの関係は楽しいだけのエリアを越え、より深い繋がりに変わった。
 そして、皆は私に言った。
『誰かと比べる必要なんてない。千紘は充分可愛いしイイ子だよ!』
 力説する葵ちゃんと、頷く皆に感動しながらも、もう一人の卑屈な私が嘲笑っていた。
 皆は実際の千晶ちゃんを知らないから、ある意味無責任な発言ができるのだ。私たち二人を並べて見てきた中学の友達なら、全く別のリアクションをするはず。
 例えば、本当に太って悩んでいる子に対して、迂闊に「ダイエットしたら?」とは言えない。同じように、皆は千晶ちゃんの飛び抜けた能力と共に、私の抱えるどうしようもない劣等感を知っていた。だから「もっと頑張れば追い付けるよ」なんて絶対言わなかった。「双子だからって、全部一緒にはならないよ」と、私に同情してくれるだけ。
 私は千晶ちゃんのニセモノ。劣化品。それは周知の事実。
 でも……もしかしたら、そんな周りの目が、私をますます卑屈にさせていたのかもしれない。
「私って意外と、『褒められれば伸びる子』だったのかもなぁ……」
 幼い頃、必死で千晶ちゃんに張り合おうとしていた自分を思い出し、苦笑が漏れる。砂場遊びも折り紙もぬり絵も、何か仕上げては「千晶ちゃんよりうまくできた?」とお母さんに確認していた。「うん、とても上手よ」と褒められたのは、完全にリップサービス。なのに私は大喜びで……すっかり有頂天になった。
 まるで『ウサギと亀』の逆パターン。甘やかされた私は亀のくせに居眠りをして、ウサギな千晶ちゃんとの差はどんどん広がった。今やその後ろ姿さえ、霞んで見えないほどに。
 もう、開き直って歩き出すしかない。卑屈な気持ちを心の奥に抱えて、なのに実際は何もできなくて、困ったとき一方的に助けてもらうだけ……そんな関係は、卒業しよう。
 決意に呼応して、私の足取りも力強くなる。迷いのない気持ちが、視界をクリアにする。常に視線をあちこちへブレさせていた誘惑を断ち切ると、目当てのカフェにも迷わず到着できた。
「方向音痴、なおったかも……?」
 古めかしい木製のドアを押しあけると、チリリンと鳴り響くベルの音。それがレベルアップ音に聴こえて、私は思わず笑みを漏らした。
「いらっしゃいませ」
 ドアの正面、レジのあるカウンターに立っていたのは、例の髭のイケメン店員さんだ。低く通るバリトンの声と、営業スマイルとは違う、いたずらっ子みたいなニヤッと含み笑い。「先週のことを覚えている」と告げるように。
 私はバツが悪いような、どこかくすぐったいような気分で軽く頭を下げた。店内を見渡すと、十席ほどのフロアにお客さんの姿は無く、クラシックだけが穏やかに響いている。私の気持ちはすぐ顔に出るから、店員さんにバッチリ伝わってしまったようだ。カウンターへ歩み寄る私に対し、あからさまな苦笑いを向けてきた。
「この時間は、ちょうど空いてるんですよ。もうすぐ仕事帰りのお客さんで混み合いますから」
 どうぞお好きな席へ、と促す店員さんの笑顔に見とれかけ、私は慌てて首を横に振った。
「今日は持ち帰りで……あと、先週はすみませんでした。私、せっかくのケーキ残しちゃって」
「気にしなくていいですよ。というより、あれは戻ってきた彼が全部食べてくれたからね」
「あ、そうだったんですか……」
 私のケーキも、清水が食べちゃったんだ……。
 ふと斜め奥を覗けば、窓際に置かれた古材のテーブルと、猫足チェスト。その向こうには、風に揺れるモダンな笹オブジェ。私のくくりつけた女の子も、あの中でヒラヒラと舞っているはず。
 思い出したくなくて、必死で蓋をしていた記憶が溢れてくる。私はギュッと目を閉じ、湧き上がる悲しみを押し殺した。
 レベルアップした私は、もうその記憶で傷つくことは無かった。代わりに描かれる、一つのイメージ。
 きっと清水は、フィールドを駆けるように、薄闇に包まれる街を全力疾走したのだ。約束通り、三十分後にここへ戻って、私が居ないことを知って……。
 たぶん、捨て犬みたいな顔をしたはず。
 熱がぶり返したように、自然と頬が熱くなってくる。気恥しくなり俯いた視線の先……カウンターに乗せられた店員さんの大きな手の下にある、一枚の紙が目に止まった。
 私は直感した。これは神様が導いた、勇者への新たな試練だと。
「あのっ、それ詳しく教えてもらっていいですかっ?」
 私が指差した先、極太マジックで書きかけの文字は、『アルバイト募』で止まっていた。

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