喉ニ小骨ガ

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「砂漠に降る花」
番外編


番外編2(8)シャイニング☆ドラゴン ~その7~

2010.01.17  *Edit 

7.少年は光龍の夢を見るか?(最終話)


「勇者殿、お疲れ様ー」
 神殿の入り口から、転がる瓦礫をひょいっと身軽に飛び越えて歩み寄ってくる、あの男。定番の黒いローブに、胡散臭過ぎる涼しげな表情。その頭上には『ドッキリ大成功』と書かれた看板が見える、気がする。
「てめぇ……ハメたな?」
「ゴメンねゴメンねー。ハハッ」
 魔術師は、怒り心頭な俺の視線をあっさり外すと、俺に寄り添ったままの光龍と盛大にブチ壊れた神殿をきょろきょろと見渡した。
「またずいぶん派手にやったなぁ、チョビ? お前が龍の姿になるところなんて、久しぶりに見たよ」
 当たり前のように光龍の真名を呼ぶ魔術師。その瞬間、握られた左手の力がきゅっと強くなる。俺は無意識に光龍をかばうように腕を引き、魔術師の前に立ちはだかった。
「おいっ、どこから見てたんだよっ!」
「んー、最初から最後まで、かな」
「企んでたコト、全部吐けっ!」
 俺はドラマに出てくる若造刑事のように叫んだ。すると魔術師は、崖の上に追い詰められた真犯人のように、砕けた口調で種明かしをした。
「チョビは元々、俺の飼い龍だったんだよ。それが最近家出しちゃってさ。守り手の契約も一方的に切られた上に、拗ねて暴れて困ってたんだ。だから君のことは、花嫁でも勇者でもなくて『新しい飼い主』として召喚したってワケ。ま、俺が君のイイ匂いに惹かれたってのも嘘じゃないけどね」
 王城の皆には内緒だよ? と笑う魔術師。混乱状態の俺には、話がさっぱり飲みこめない。
 俺は救いを求めるように、握りしめた女神の剣を見つめた。右手には豆ができて痛いけれど、それでも手放したくないと思ってしまう不思議な剣。振り向けば、申し訳なさそうにしゅんと頭を垂れている光龍が居る。
 俺は独り言みたいに弱々しい声で呟いた。
「でも俺、さっきまでコイツと真剣に戦って……この剣ともすごく気が合って、なんだか本物の勇者になれたみたいで……」
「あ、ゴメン。これも内緒だけど、その剣って実は紙とか布しか切れない子ども勇者用なんだ。綺麗な心じゃないと抜けないって代物で、チビッコの勇気とパワーを増幅する効果が」
 脳裏をよぎる、ハラリと舞った光龍の金髪……確かな手ごたえがあったのに、光龍の頬には掠り傷一つ無かった。手にした剣を凝視すると「ゴメンねゴメンねー」というように鈍く明滅する。
 ああ、まさかラスボスとのバトルに、オモチャの刀を渡されてたなんて――
「ヒドイ! 俺メチャメチャ頑張ったんだよ! コイツに炎吐かれたときは、死ぬかと思ったのに!」
「まさか、チョビが人を殺すワケないよー。あれは“闇の炎”ってやつで、本当は熱くもなんとも無いただの幻なんだ。中には本物だと思い込んで火傷したり、恐怖で気が狂っちゃう臆病者も居るんだけど、まあ君は大丈夫だと思ったよ。この俺が“チョビの飼い主に”って見染めた相手だからね」
 良く頑張ったね、とねぎらわれてもちっとも嬉しくない。むしろマグマのような怒りが、ふつふつと湧き上がってくる。
 いつこの剣で斬りかかろうかと算段を始めた俺に、魔術師は容赦ないダメ押しを加えた。
「あとこれは、君のためでもあったんだよ。お風呂場でツマンナイこと愚痴ってたけど、“勇者ごっこ”でだいぶスッキリしたろ?」
「――盗み聞きっ?」
「イライラしたときは、身体動かすのが一番。チョビも君と遊んでもらって喜んでたみたいだし、なにより君が“契約者”の器として相応しいかも判断できたし、一石三鳥だったね」
 この男、黒い。黒過ぎる。
 開いた口が塞がらない俺の前で、チョビと魔術師は仲良さげな会話を繰り広げ始める。
「全く、俺が結婚したから家出るなんて、肩身の狭い小姑じゃないんだから」
「ううっ。我も美しい花嫁が欲しかったのだ。世界中探したのに見つからなかった……」
「俺の奥さんより美人なんて、この世界で見つけるの不可能。っていうか、そもそもお前が“花嫁探し”ってのが間違ってるっつーの。うちの奥さんのことそれほど好きだったってのは、まぁ分かってやらなくもないけどさ」
「うむうっ……しかし我は」
「誰に仕込まれたのか知らないけど、その妙チクリンな言葉遣い止めろって。ったく、お前がダダこねるだけで嵐やら大地震が起こるんだから、ホント勘弁してくれよ。その修繕費、全部俺が払うんだぞ? 挙句の果てに、命懸けでわざわざ異界くんだりまで行かされるんだから、たまったもんじゃないよ」
「すまないのだ……だが、そうして粘ったおかげでヒカルに出会えたのだっ」
 突然矛先がこちらを向いて、俺はびくんと身体を震わせる。真剣バトルでボロボロになったドレスが、だらしなく揺れる。
 そんな小汚いニセ姫な俺をキラキラした瞳で見つめ、チョビヒゲ男は宣言した。
「ヒカルを、我の伴侶にするのだ!」
「むむむ無理っ! 俺男だしっ!」
 首根っこが千切れるほど頭を振る俺に、光龍は力強く頷いてみせる。
「分かっておる。戦いの前にヒカルと“契約”したであろう?」
「へ?」
「『お前を倒してサクッと元の世界へ帰ってやる』と、ヒカルは告げた。我はそれを許した。我にはこの運命が視えていたのだ」
 にいっ、といたずらっ子のように笑った光龍は……再び変化!
 白い煙と共に現れたのは、見事な金髪ロングヘアな美女だった。なぜか女教師風のスーツを着ている。ブラウスの胸のボタンははち切れそうにパツンパツンで、紺色のタイトスカートのスリットが太腿の付け根まで深く切れ込んでいて……ヤバイ。
「ね、ヒカル。これならどう? 遠慮なく押し倒してくれていいのよ? ついでにアタシをサクッとお持ち帰りして?」
 なんだこの神龍《シェンロン》! ボール七個集めてないのに願いが!
 待て! 落ち着け自分!
「おおお俺っ! 年上のセクシー系は苦手っ!」
 大事な剣を取り落としたのにも気付かず、俺は顔の前で両手を最速ワイパーのように振る。不機嫌そうに眉根と谷間を寄せ、だっちゅーののポーズをとる女豹。
「ふーん、お姉さんに似てるから、ね……ヒカルってシスコン?」
「俺の本音勝手に読むなー!」
 そんな俺たちのやり取りを見て大爆笑していた魔術師が、笑い涙を拭いながら告げた。
「おいチョビ。お前の敗因は、相手の好みに合わせ過ぎることだ。見た目だけ変えたって、すぐに本性バレるんだぞ? ここはお前本来の魅力で勝負すべきところじゃないのか?」
 女豹は、ぷうっと頬を膨らませながらもコクンとうなずいた。なんだか非常に幼いしぐさだ。大人っぽい外見とのミスマッチが激しい。
「わかったー。じゃあ、これでどう?」
 三度変化!
 そこに居たのは、思わず抱きしめて頬ずりしたくなるような、激烈美少女だった。背は俺の胸までしかなく、くりっとした金髪の長い巻き毛に、パッチリ二重の碧い瞳。白い肌はぷにぷにと柔らかそうで、ツンと尖った鼻はやや低め、小さな唇はチェリーのように赤い。飾り気のないシンプルな白いワンピースはひざ丈で、するんと伸びた生足の先にはリボンのついた赤い靴。
 可愛い。可愛過ぎる。
 しかしさすがに幼い……これじゃ幼女だ。犯罪だ。
「ねーヒカル。これならイイ?」
「あ、いや、ちょっと幼過ぎる、かな?」
「むぅ。でもあたしまだ子どもだし、これが本当の姿なんだもん。しょーがないよ。もうちょっと大人になるまで我慢して?」
「本当の姿って……じゃあ、さっきのチョビヒゲ男は」
 俺の疑問に、笑いを噛み殺しながら魔術師が応える。
「チョビは、外見を自由に変えられるんだよ。でも実際はまだチビのメス。人間体だとこんなもんだろ」
 チビっていうなー! と、幼女は魔術師の胸にロボコンパンチをポコポコお見舞いする。溺愛する娘をあやすように、魔術師が幼女の頭をかいぐりまわす。俺はまたもや置いてけぼりになる。
「えっと、ホントはメスなのに“花嫁”を探してたのはナンデナンデ……」
「それはさ、女好きのコイツが俺の奥さんに横恋慕……イテッ!」
 幼女ドラゴンによる、快心の一撃。魔術師は、赤い靴がめりこんだ股間を抑えてうずくまる。
「ちがうもんっ! もーいいよ! あんたなんてもうご主人様じゃないもんっ!」
 両手を腰に当て、ふんっと鼻息荒く宣言すると、幼女は俺に向き直った。そのつぶらな瞳が浮かんだ涙でうるうる潤んでいて、半開きの唇の奥にピンクの舌が蠢いて……俺はなんだか崖っぷちに追い詰められた気分になる。
「ねーヒカル、あたしとけっこんしてくれるよね?」
「あ、いや、ちょっと幼過ぎる、けど」
「だいじょうぶ、しんぱいなしっ。あと三年後、ヒカルが十八になる頃には、あたしもけっこんできる年になるからっ」
「三年後……てことは、今十三歳って設定か。中一で童顔の幼児体型キャラならギリギリ……いやでもっ」
「あ、こう見えていちおう子ども作れる身体だよ、ご主人さまっ!」
 もう、言葉が出ない。鼻の穴の奥がじわっと熱くなってくる。毛細血管は決壊寸前だ。
 そんな俺の妄想を断ち切るように、甲高い声が上がった。


「――えっ! あれが光龍様っ?」
 神殿の奥からぞろぞろと、女性の団体が現れた。引率しているのは魔術師の奥さんだ。どんな美女に囲まれていても負けない、特別な輝きを放つ女性。
「ここの生活すごく楽しかったのに……」
「美しかった光龍様があんなお姿に……」
 ぶーぶーと文句を垂れる女性陣に、彼女が母の愛で一喝。
「いつまでも光龍ちゃんに甘えないの! 現実逃避は止めてうちに帰りなさい!」
 女性陣はばつが悪そうに目配せし合うと、素直にうなずいた。そのやりとりを見て、俺はガッテンする。
 彼女たちが光龍に囚われてたって情報も、魔術師のガセネタ……いや、良く考えればこの魔術師はその辺うまくお茶濁してたような?
 と、俺のドレスの裾をつんつんと引っ張る小さな手。
「ね、ヒカル。あたしたちもおうち帰ろ? あたし眠くなってきちゃった」
 上目遣いで覗き込む瞳と、小さくぷくっとした指が目を擦るしぐさに、ノックアウト。
 思わず鼻の付け根を摘んだとき、その手が白い靄に包まれていることに気付く。
 魔術師が、床に転がった女神の宝剣を拾い上げ、近づいてきた。
「そろそろ時間だな。ありがとう勇者殿。この世界はもう大丈夫だ。どうか向こうの世界で、チョビを幸せにしてやってくれ。この剣はチョビを引き取ってくれたお礼に差し上げよう」
 すかさず、魔術師の奥さんが駆け寄ってくる。当たり前のように魔術師に寄り添って腕を絡め、キュートなウインクを投げた。
「輝君、また遊びに来てね! そのときは“媚薬シャンプー”お土産によろしくっ」
 媚薬シャンプー……と軽くショックを受ける俺に向かい、満面の笑みで手を振るバカップル。
 幼女な光龍が俺の腰に抱きついて、元ご主人様たちに「ばいばい」と囁く。
 俺の手には、輝く宝剣。
 それら全てが、闇に消えた。

 ◆

「輝、いつまで寝てるの! 遅刻するよっ!」
「あれ、お姉ちゃん……」
 俺の頬をくすぐる長い茶髪。額に触れた手は冷えていて気持ちがいい。
 布団に横たわる俺を真上から覗きこんでくる姉は、大人っぽい猫顔だ。童顔な俺とはまったく似ておらず、近所でも『高校生には見えない』と噂になるほど。春には上京して、大きな会社の受付嬢になることが決まっている。
「起きたのね、良かった。あんた昨夜お風呂でのぼせて倒れてから、ずっと寝てたのよ。熱も無いみたいだし、学校行けるでしょ? お母さん心配してるから、早く着替えといでっ」
 額にそっと触れていた手のひらがグーに変わり、ゴツンと拳骨を落とされた。周囲には猫をかぶっているらしいけれど、本来の姉はガサツで男らしくて……ちょっとカッコイイ。
「ふわぁーあっ」
 大あくびをしながら上半身を起こす。真冬の冷気に晒され、身体が少しずつ目覚めていく。頭がクリアになる分、あの不思議な世界が遠のいていくのを感じた。
 俺は昨夜お風呂でのぼせた結果、RPGな夢を見た。アホらしくも妙に面白い夢を。
「サミシイけど、それが現実かぁ……」
「っと、そーだ。メリクリ! 昨日サンタさん来てたみたいよっ。すんごい美人のサンタさんがね!」
 意味不明な台詞を放り投げ、なんちゃってマライアキャリーを口ずさみながら部屋を出て行く姉。慌てて枕を退かした俺は、そこに薄っぺらい宝箱を発見した。
 丁寧にラッピングされたその箱を開くと……。
「うわ、『シャイニング・ドラゴン』だっ!」
 そのとき、俺は察した。自称美人のサンタはお姉ちゃんだ。となると最近帰りが遅かったのは、デートじゃなくてバイトで……。
「なんか俺、メチャメチャ幸せ者じゃん」
 ボロアパートのセンベイ布団の上、パッケージに描かれたドラゴンを指で撫でる。懐かしさすら感じるその姿を胸に焼きつけ、俺は顔を上げた。
 この世界で、俺は甘えてばかりの役立たず。今はまだ、お母さんとお姉ちゃんのスネをかじるしかないヘタレ高校生だけれど、勇気を出して少しずつ自分を変えていこう。もらった幸せを、いつか何倍にも膨らませて返せるように。
「さて、起きるか……んっ?」
 布団に入れたままの下半身をもぞりと動かすと、素足に触れたのは……ひんやり冷たくて硬いモノ。
 ――何か、ある。
 恐る恐る布団をめくると……そこには朝日を受けて黄金色に輝く、一振りの宝剣。
 エイトビートの爆音で鳴り出す鼓動。俺は震えながらその剣を手に取り、ゆっくりと鞘を抜く。
 それは“勇者”の証……。
『――ぼむっ!』
 宝剣から湧き上がった白い煙に、俺は唖然として見入った。
 中から現れたのは、金髪の幼女だった。その愛らしい姿も、ぷくっとした指で目を擦るしぐさも、夢で見た通り。
「むにゃむにゃ……ヒカル、おはよーです」
「……チョビ?」
「はい、ご主人さまっ!」
 ああそうか。この世界もまだ夢なんだ。
 よし、もう一度寝よう。
 布団に潜り込もうとする俺の苺髪を、つんつん引っ張る小さな指。
「ねぇ、ヒカル? 起きないとお母様が心配するですよー。むうっ、仕方ないのです。こーなったら、おはようのちゅー攻撃で」
「――起きるっ! 起きますっ!」
 目の前には、お餅みたいにぷうっと頬を膨らませた、可愛過ぎる女の子。
 俺は苦笑を浮かべながら、彼女の柔らかな髪をくしゃりと撫でた。

 もうこうなったら、とことん楽しんでやろう。
 光り輝く龍が、あどけない天使になって舞い降りた、この夢《リアル》を――。


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【後書き】↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたい方のみ反転を。
(携帯の方は「テキストコピー」でたぶん読めます)
 ということで、お約束ベタベタエンドでしたっ。このベタさにご満足いただけましたでしょーか? 長編的には、ここで第一章完という形になります。第二章は現代ファンタジーで、チョビはうる星やつらのラムちゃん的ポジションにしようと思ってます。魔法パワーで「身寄りのない可哀想な遠い親せきを預かった」なんて設定にして、ついでに魔法パワーで宝くじ当ててお引っ越し。二人は同じ校舎内にある私立中高一貫校に通わせて……第三章は再びゲームの世界へ。けっこうなボリュームになりそうですわ。なんて構想はさておき、最終回の補足をば。やりたい放題しちゃいましたが、一応ツジツマは合わせたつもりです。チョビが男装してた理由だけ、ほのめかす程度にしてしまいました。態度で伝わればいいなー……はい、微妙過ぎましたね。実はチョビは魔術師さんラブでした。半分恋で、半分はヒナ鳥ピヨピヨな微妙さがあり、しかも奥さんとも仲良しという環境で煮詰まったあげくあの複雑な行動を……これちゃんと解説しようと思ったら、番外編一話分必要なくらいですわ。また長編でお会いできるときにはその辺もぜひ。(完成→応募→落選orzの後なので、一年弱くらいかかるかなー)あと、砂漠に降る花からいらした方には、もう一話分後フリがございます。またもやオチにご期待を。



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