喉ニ小骨ガ

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



*Edit TB(-) | CO(-) 

「砂漠に降る花」
番外編


番外編2(4)シャイニング☆ドラゴン ~その3~

2010.01.12  *Edit 

3.龍の花嫁は宝剣がお好き


 ふかふかお姫さまベッドの上、ガウンいっちょで一人残された俺は、頬を抓りつつ冷静に考えた。
「痛ぇ。どー考えてもリアルに痛ぇ」
 つまりこれは夢であって、夢じゃない。
 このゲームをクリアしない限り、元の世界には戻れない。なんとなく、そんな気がする。
 溜息をつきながらベッドに倒れ込むと、弾んだ髪からふわりと苺臭。だいぶ慣れたのか、それほど不快には感じないけれど……。
「あーあ、こんなことなら石鹸で洗っときゃ良かった」
 思い起こせば俺の人生、幼い頃から受難の日々だった。原因は、苺臭が無くても素で女に間違えられる、屈辱的なこの容姿。いっそ開き直ってしまえと、中三の文化祭では男女逆転演劇でシンデレラ役なんてやってみた。結果、男からのラブレターが殺到し……これは封印した黒歴史。俺は可愛い女の子が大好きだ。
「しっかし、さっきのひと美人だったなぁ」
 魔術師、許すまじ。
 あんな美女を侍らせながら、この俺にまで手を出そうとするとは!
 この俺に……。
「うぇー、キモッ!」
 俺がガバッと身を起こしたとき、部屋のドアが勢いよく開いた。
「――姫君! ご無事でしたかっ?」
 野太い声を上げて乗り込んできたのは、魔術師では無く騎士だった。筋骨隆々の体格に、品格のあるワインカラーの騎士服。短く刈り上げた黒髪と鋭い三白眼、引き締まった精悍な頬には刀傷が残る。なびく白いマントが褐色の肌に良く映える。
「来た、ハーレム展開……」
 騎士は颯爽と駆け寄ると、ベッドの脇に跪いた。壊れモノを扱うようにそっと俺の手を取り、その甲へと口付けを落とす。かさつく唇の感触に、思わず顔が熱くなる。
「なんと美しい……異界の姫君は、まさに我らが女神の愛娘。あの極悪非道な暗黒魔術師の手にかかる前に、私と逃げましょう!」
「あの、俺男なんスけど?」
「ハハッ、ご冗談を! このように麗しく芳しい香りを放つ男児がどこに?」
 脱力した俺に追い打ちをかけるように、新たなお相手が登場。
「――異界から姫君が訪れたと聞いたが、そなたか?」
 俺の手をニギニギしていた騎士が、瞬時に飛び退き頭を下げる。
 長い足で優雅に歩み寄るのは、またもやタイプの違う美青年だ。柔らかな栗毛がかかる肌は白く、全てを見通すような深い鳶色の瞳と、整い過ぎた西洋系の面立ち。丈の長い純白の上着には、瀟洒な金糸の刺繍が施されている。
 これは、本物の王子様だ。
「ふむ……異界の姫君とは、あまたの宝石も霞む美しさだな。これを光龍にくれてやるとはあまりに惜しい」
「あの、俺男なんスけど?」
「ハハッ、笑止千万! これほどなよやかに芳しく咲く花が、男児などとはとんだ戯言を!」
 鼻で笑い飛ばした王子は、遠慮なくベッドへ近寄ってきた。顔を至近距離から覗き込まれ、否応なく鼓動が高鳴る。咄嗟に目を伏せたものの、その手からは逃げられない。強引な王者の手が、俺のアゴを摘み強制的に上を向かせる。
 情熱的に煌めくその瞳を見て、俺は思った。
 なんかもう、BLでもいいや――
「お待ちくださいっ!」
 サーモンピンクな空気を切り裂く、ちょっと待ったコール。ハッとして、俺は王子の手を振り払う。王子は苦々しい表情でチッと舌打ちし、ベッドから離れた。傍らでは騎士が胸を撫で下ろしている。
 頭を抱える俺の前に、声の主が姿を現した。
「光龍の花嫁にちょっかいを出されるとは、さすがの私も看過できません」
 王子の威厳などものともせず、皮肉気に笑う灰色の魔術師。助けてもらったけれど、何か釈然としない。
 魔術師に続き、お目付役らしき老人、付き人風の若者が数名バタバタと駆け込んでくる。最後にするりと入ってきた例の美女が、静かにドアを閉めた。


「なんと! ではこの姫君は、まこと男児……」
「ええ、作戦失敗です」
 呆然とする王子と、全く悪びれた様子の無い魔術師。その脇には、真っ青になって縮こまる美人妻。不甲斐ない旦那の代わりに、深々と頭を下げる。
「申し訳ありませんっ! この人って昔から女なら見境無いヘンタイ病だったんですけど、まさか男女の見分けもつかなくなる程病状が悪化したなんて!」
 全くフォローになっていないその謝罪を受けて、王子たちも苦笑い。
「もう良い。間違えたお前の気持ちも、分からなくもない」
 ねっとり絡みつく王子の視線。負けじと騎士も俺に熱い眼差しを送る。魔術師は、美人妻の手前こっそりと……。
「では王子、この者の処遇はどうなさるおつもりで?」
 お目付役の老人の声が、俺を現実に引き戻す。
 そうだ、この先俺はどうしたら……?
 全員が黙りこくる中、魔術師が王子たちを押しのけて俺の正面に立った。
「輝殿、あなたが男児であり、光龍の花嫁になれないことは良く分かりました。しかしこの世界に召喚された以上、何らかの使命を担うはず……そこで、ひとつご覧いただきたい物があります」
 初めて聞く重々しい声色と、真摯な眼差し。俺は無意識に姿勢を正す。
 ゆったりしたローブの中から取りだされたのは……一振りの短剣だった。
 その美しさに、誰もが感嘆の息を漏らす。
「これは『女神の涙』という名の宝剣。世界で唯一つ、光龍のために作られたという伝説の剣です」
「へえっ、ドラゴン属性の剣かぁ」
 ようやく男児好みのアイテム登場に、俺はワクワクしながらその剣を受け取った。窓辺から差し込む光を何倍にも増幅して跳ね返す、黄金の剣。柄全体に散りばめられた無数の透明な輝きが、全て宝石でできているとしたら、相当なお宝に違いない。
「キレーな剣だなぁ。金色でピカピカだっ」
「ただし、真の勇者でなければその剣を抜くことは――」
 鞘を軽く引っ張ると、するりと抜けた。
「……あれ?」
 常に飄々としていた魔術師も、唯我独尊系の王子も、屈強な騎士も……そこに居た全員が水戸黄門ラストのように膝をつき、俺に向かって頭を下げた。
「――勇者様!」
 ああ、なんてお約束。


→ 【次の話へ
→ 【Index(作品もくじ)へ

【後書き】↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたい方のみ反転を。
(携帯の方は「テキストコピー」でたぶん読めます)
 一日遅れで失礼しました……ではなく、すんずれいすますた!(←シムケン風に)よーやく第三話、折り返し地点です。ゲームは花嫁(ハーレム)モードから、一気に勇者モードへシフト。皆さんはどちらがお好みでしょうか? 作者はもっとハーレムモードで遊びたかったです。PG12……いや、R(略)って感じで膨らませようと思えばいくらでも……ふふふ。王子&騎士ともいちゃつかせたかったし、あと主人公の黒歴史話とかー。これでも減らした方なんですよ。今回気付いたのですが、ハーレムで遊んでると物語が進まないという……。後ろ髪引かれつつ、勇者の話。今作品には異世界RPG系の王道エピソードをいくつ盛り込めるか? という課題がありました。この「勇者じゃなきゃ抜けない剣」もまさに王道。シリアスに書いたらカッコイイだろーに、作者の力量(技術&趣味)的に、こんなギャグになってしまったー。
 次回は、勇者モードで最初の課題にトライ。といいつつ、まだまだハーレムモードを引きずっておりますふふふ。



*Edit TB(-) | CO(0)

~ Comment ~

 管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

MENU

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。