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「砂漠に降る花」
番外編


番外編2(3)シャイニング☆ドラゴン ~その2~

2010.01.10  *Edit 

2.王道RPGのア・ブ・ナ・イ裏シナリオ


 温かいお茶を飲んでクールダウンした俺は、この夢の正体を悟った。
 今日発売のRPG『シャイニング・ドラゴン』……どうやら俺は、このゲームの世界に入り込んでしまったらしい。ラブの代わりに欲しい欲しいと願い続けてきたから、慌てん坊のサンタクロースがプレゼントしてくれたのだろう。
 ありがと、サンタさん!
「――んなわけねーって!」
「どうしました? 姫君」
「姫って呼ぶんじゃねー!」
 やさぐれた俺の気持ちを、男は霜柱のようにサックリ踏みにじる。
「姫君は可愛らしいだけでなく快活な方ですね。だからこそ“光龍の花嫁”という責務にも耐えうる……っと、そういえば姫君の名は?」
「輝《ヒカル》。っていうか姫じゃないし」
「それは美しい名ですね。朝露を受けて咲く白百合のように可憐なそのお姿といい、甘く芳しい御髪といい、まさに姫君は“光龍の花嫁”に相応しい」
「だから、姫とか花嫁とか呼ぶなっつーの!」
 のれんに腕をぎゅむっと押しつけても、手ごたえは無し。俺は諦めて『シャイニング・ドラゴン』のことを考えた。
『魔物が跋扈《ばっこ》する広大な世界。そこを司る神の化身が『光龍』だ。しかし突如錯乱した光龍は天変地異を起こし、世界を滅ぼしかねない魔王と化した。人々は伝説の勇者に願いを託す……』
 まさに俺好みの王道RPG。でも悲しい事に、俺の小遣いでは手が届かない。中古品が出回るのを待つしかない。
 それにしても、未練が高じてこんな夢を見てしまうとは、我ながら根暗過ぎる……。
 俺はぶるぶると頭を振り、熱いお茶を一気に飲み干した。
「ごちそうさまっ」
 男に向かって差し出した空のカップ。それを男がちょんとつつくと、カップはどこかに消えてしまった。
 手慣れたマジックのように見えるけれど、違う。これは魔術の仕業だ。


「ではまず、魔術について簡単にご説明を……」
 男はプログラムされた脇役《モブ》キャラのごとく、流暢に語り始めた。
 この世界には、当たり前のように魔術が存在する。火を生み、水を呼び、風を誘い、光を放つ。
 しかも、俺を呼び寄せたこの男は“世界一”高名な魔術師、らしい。言葉の端々に自慢話が混ざりつつの説明は、俺がオフィシャルサイトでチェックした内容と完全に一致した。
「魔術を使うには、三つの条件が揃わなければなりません。魔術師、贄《にえ》、対象物です。今回私は贄となり、魔術師の見えざる手として異界へ飛びました」
「――えっ!」
「どうされました?」
「ああ、いや、なんでもない……続けて」
 俺は動揺をごまかすように、無理矢理笑みを作った。
 確かゲームでは、魔術が失敗したら贄は壊れるという設定だったはず。特に“召喚系”の魔術は、最も難易度の高い禁断の……。
 そんな台詞が飛び出しそうになるのを、俺はぐっと堪える。ゲームの話なんてしたら、余計ややこしくなってしまう。ここは大人しく黙《モブ》っておこう。
「しかし、さすがの私も異界での人探しなど初めての経験で……輝殿の香りに導かれなければ、今頃私の魂は潰えていたかもしれません。やや無謀ともいえる作戦でしたが、この国の筆頭魔術師として仕方なく――」
 そこで魔術師は言葉を切り、なぜか後方のドアをチラッと気にした。そして口元に手を添え、俺に顔を寄せて丸秘裏話。
「……というのは表向きの事情です。実は輝殿を召喚した魔術師は、私の妻でして。彼女に頼まれたら、私に断る術などありません」
 俺はうんうんと激しく同意する。俺も母と姉の頼みごとを断れた試しがない……どこの世界でも、女は強し。
「さて、本題に戻りましょう。光龍は、元来我らの守り手としてこの城におりました。しかし今は大陸北端、聖山の洞穴奥深くに根城を構え、ふらりと地上へ出ては暴れまわる始末。その力は強大で、普通の人間には太刀打ちできません。そんな光龍を鎮められる存在が『花嫁』なのです」
 魔術師は、淡々と語り続ける。
 既に何名もの美しい女性が、花嫁候補として光龍の元へ送られた。それでも天変地異は止まず、女性たちは誰ひとり戻らない。そこで苦肉の策として、危険な異世界からの召喚作戦に踏み切ったという。
「召喚の条件は『光龍を魅了する者』でした。特に光龍が好む、黒髪の輝く芳しい乙女を求めて……そんな乙女が見つかるだろうかと半ば諦めかけていた私にとって、輝殿との出会いはまさに奇跡でした。運命の相手とは赤い糸が繋がっていると申しますが、私が夢中で手繰り寄せた細い糸の先に、輝殿が居たのです。そのときの胸の高鳴りは、言葉にすることなどできません」
 魔術師の顔が、少しずつ俺に近づいてくる。グレーの瞳が蝋燭の炎のように妖しげに揺れる。
 真面目な話をしていたはずが、なぜこんなピンク展開に……と、そこで思い出した。『シャイニング・ドラゴン』には、冒険とは別の隠しシナリオが存在する。それは女性をターゲットにした、いわゆる“ハーレム系”恋愛アドベンチャー……。
「光龍を魅了するほどの存在に、私が惹かれないわけがないのです。もし私に伴侶が居なければ……いえ、この国では多夫多妻も認められております。輝殿が受け入れてくださるならば不肖私が」
「待て、早まるな! 俺は男だっ! 近寄るなっ!」
 いくら美形でも無理!
 BLは無理っ!
「性別など、あなたの魅力を前にすれば些細な問題です。あなたに心奪われてしまう私は、あたかも花に引き寄せられる蝶のようなもの。そう、あなたが悪いのです。その美貌と香りで私を誘う……」
 甘い台詞をこれでもかと垂れ流しながら、俺を捉えようと手を伸ばす魔術師。ついにベッドの隅に追い詰められたとき、俺は見た。魔術師のローブの肩越しに、ゆっくり開くドアを。
「さあ観念して私のモノに――」
「後ろ後ろーっ!」
 魔術師は煩わしげに後方を見やり、そのまま硬直した。
 そこに居たのは、深紅のローブを着た美しい女性だった。腰まで伸ばした絹糸のような黒髪、すべらかな白磁の肌、潤んだ黒い瞳、艶めく赤い唇……俺が今まで見たこともない、まさに天女のような究極の美女。
 美女の唇の端がすうっと横に持ち上げられ、澄み切ったソプラノの声が零れる。
「あなた、ちょっとよろしいかしら……?」
 彼女は相手の同意も得ぬまま、指揮者のように手を一振り。魔術師は梱包された荷物状態で固まり、ゴロンと床に転がった。そのまま棺桶に入れられたパーティメンバー(死亡中)のように、見えない縄でずるずると引きずられて部屋を出て行く。
 哀愁漂うその姿に、俺は「アーメン」と祈りを捧げた。


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【後書き】↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたい方のみ反転を。
(携帯の方は「テキストコピー」でたぶん読めます)
 だいぶチマチマと進んでおります。微修正しつつの投稿につき……スミマセン。今回はBLハーレムモードな回でした。『シャイニング☆ドラゴン』には、こんなゲームがあったらなーという作者の妄想が詰まっております。普通に勇者モードで冒険するも良し、花嫁モードでモテても良し。そして主人公は男でも女でも良し……ふふふ。今回はBL(ぼぉいずらぶ)モードになっておりますが、それは仕様(ギャグ)ということでご容赦を。さてこの作品では、小見出しをそれなりに考えてつけるようにしています。今回はずっと使ってみたかった『ア・ブ・ナ・イ』を採用してみました。そう、危ない刑事……こちらも分からない方は親御さんに聞いてみましょう。知ってる方には「タカ派? ユージ派?」と質問を。作者は当然タカ派です。タカ派と答えた方は、一緒に歌いましょう。アラビュー嘘に濡れたー冷たいー(以下略)
 次回は、一時退出したヘンタイ魔術師さんの代わりに、別の人物が現れます。ハーレムモード、もう少しお楽しみくださいませ。



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