喉ニ小骨ガ

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「砂漠に降る花」
番外編


番外編2(1)シャイニング☆ドラゴン ~前フリ~

2010.01.08  *Edit 

 魔物が跋扈《ばっこ》する広大な世界。
 そこを司る神の化身が『光龍』だ。
 しかし突如錯乱した光龍は天変地異を起こし、世界を滅ぼしかねない魔王と化した。
 人々は伝説の勇者に願いを託す……。

  * * *

『――コンコン』

 遠慮がちなノックの音に、サラは首から上だけ振り向いた。
 読みかけの本を、机の上にパタンと伏せて。

「はーい、どうぞー」

 重たい木の扉が、床の岩に擦れながらギギギと音を立てて開く。
 と同時に、すっかり聞き慣れたアルトの声。

「ねーサラ姫、聞いてくれる?」
「なぁに、クロル王子……って、また来たの?」

 サラの中の“サラ姫”が大歓迎ではしゃぐのを、がっぷりよつで押さえ込みながら、サラは苦笑した。
 ここは、聖なる山こと盗賊の砦。
 戦争が終結した現在、この場所は交通の要所というだけではなく、ネルギとトリウム両国の王族も立ちよる憩いの場……まさに『道の駅』と化していた。

 特に頻繁に利用しているのが、クロル王子だ。
 少し伸びた前髪の隙間から覗くキラキラ輝くつぶらな瞳と、涼やかで整い過ぎた面立ち、とっつきにくそうに見えて意外と愛想の良い態度から、今では盗賊女子のアイドル的ポジションだ。
 結果、屈強な男達から殺気だった目で睨まれているのだが……当の本人は全く意に介さず、まるで勝手知ったる我が家のように闊歩している。

「サラ姫ってば、冷たいなぁ。せっかく遠路はるばるサラ姫に会いに来たのにー」
「嘘はイケマセン! どーせ闇の魔術でひとっ飛びでしょ。あと理由も違うよね? エール王子にイタズラして怒られたとか?」
「別に嘘はついてないよ。確かに闇の魔術は使ったけど、ここホントに遠いからけっこう疲れるし。イタズラしたってのは正解。でも相手はエール兄じゃなくて父様だし。ついでに言うと、怒ったのはお義母さん……」

 ハナの強烈な雷を思い出したのか、クロルは一度ぶるりと身震いし、口を尖らせながら顔を伏せた。
 大げさなくらいしょんぼりするその姿に、サラはついついほだされてしまう。
 クロルの手を引いて椅子に座らせ、その柔らかな髪を撫でながら問いかけた。

「ね、イタズラって何したの? 一緒に謝ってあげてもいいよ」
「んー、でも時間が解決するはずだから、たぶん大丈夫」

 強がって笑うクロルを見て、サラはしょーがないなぁと軽く溜息。
 ピンと立てた人指しゆびを軽く振って、二人分のお茶を用意した。
 魔女が封じられた結果、サラの力は徐々に開花し、もうこの程度の魔術ならお茶の子サイサイだ。
 温かいお茶の入ったマグカップを手にし、クロルは喉を撫でられた猫のように目を細める。

「ありがと、サラ姫」
「それにしても、時間が解決って……ほとぼりが冷めるまで、ここに居座るつもりじゃないでしょーね?」

 サラは、もう一つの椅子を引き寄せると、クロルの正面に座った。
 サラが無遠慮にその顔をじーっと覗きこむ……いわゆるメンチを切ってみせると、クロルは悪びれた様子も無くくすっと微笑む。
 その笑顔に、サラの中のサラ姫がときめくから、サラの顔も自ずと赤くなってしまう。
 そんな不安定なサラを、クロルは見逃さない。

「サラ姫さえ良かったら、僕ここに住みたいなぁ」
「――ダメですっ! そんなことしたら、トリウムの皆が困るしっ!」
「本当に困るのは、サラ姫だよね? だってサラ姫は僕のこと」

 ――うん、好き。
 飛び出しそうになった言葉を、慌てて飲みこむ。
 ついでに、勝手にクロルの頬へと伸びていた手も引っ込める。

『ちょっ、サラ姫っ! あんたなんてことを!』
『えー、ちょっとくらいいいじゃない。ケチー』
『浮気はダメ! 私たちにはジュートが居るでしょ!』
『彼もイイけど、この子もイイのよねっ。全然タイプ違うし。っていうか、なんでもアリの最強女神様なんだから、恋人の二人や三人や四人……』
『イケマセン! ふしだらな妄想禁止!』

 ピシャリ、と心のドアを閉めて、サラは一度大きく深呼吸をする。
 挙動不審なサラを、きょとんとして見つめるクロル。
 サラは、手のひらをウチワ代わりにして火照った顔を煽ぎながら、引きつりまくりのごまかし笑い。

「ゴメンね、ちょっと頭の中に蠅が飛んで……おほほっ」
「ヘンなサラ姫……っと、そうだ。本題を忘れるとこだった」

 サイドボードにカップを置いて、口元に手を添え顔を近寄せるクロル。
 それは、内緒話の合図。
 真剣な眼差しを受けて、サラも表情を引き締める。

「サラ姫に、聞きたいことがあってさ」
「どうしたの?」

 クロルは一瞬言葉に詰まり、キュッと唇を引き結ぶ。
 近くで見ると、目の下にはうっすらと隈が浮かんでいる。
 こんな表情を、サラは見たことがあると思った。
 いつも自信と好奇心に満ちあふれたクロルが、落ち込むくらいやっかいな出来事……。

「僕……また日本に行っちゃった、かも」
「えっ! またあの子猫ちゃんのところ?」
「ううん、そこともまた違うみたいで……僕やっぱり、オカシイのかも。今回も夢か現実か分かんなくてさぁ……」

 俯くクロルの髪が、神々しい純白の光を放つ。
 その身体からはうっすらと白い靄が浮かび、輝きながら空気に溶けて消える。
 サラが魔術を覚えるのと同じスピードで、少しずつ変わっていくクロル。
 いつしか闇を自在に操り、当たり前のように光の精霊を身にまとうその姿は……確かに普通の人間には見えない。

「とりあえず、詳しく教えてよ。その夢の話」
「分かった。あのね、今回はもしかしたら、ちょっと未来の話なのかも」
「未来?」
「うん、どうしてそう思ったかっていうとね、今度の夢には僕の知ってるひとが出て来たから。サラ姫も良く知ってる、アイツが――」


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【後書き】↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたい方のみ反転を。
(携帯の方は「テキストコピー」でたぶん読めます)
 新年お年玉企画の『シャイニング☆ドラゴン』、短期連載スタートです。この話は、三月いっぱいで一旦削除する予定になっております。理由は改稿して公募に出すので……落ちたら再度公開します。っていうかそのときは、長編の状態になってると思います。つまり短編版はこの時期だけ!(と、意味も無く煽ってみる……) さて、ちょっと意味深な感じの前フリになりましたが、もうピンとくる方もいらっしゃるんじゃないでしょーか。このタイトルですし、バレバレですよね。これは『大陸編』のさらに先の話になります。(しつこいようですが、大陸編は全く未定ですよー。エピローグ2はもうちょいお待ちをっ) 今作品は、本編を見ていない方にも楽しめる、砂漠に降る花のダイジェスト版というかマイナーチェンジ版のような感じに仕上げてます。前フリ無しでも良かったんですが、クロル君出したさにくっつけてみました。しかしクロル君のパワーも便利だわぁ。なんちゃって異世界ファンタジー最高っ。(このイイカゲンさが公募の敗因になる予感大)



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