喉ニ小骨ガ

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「その他掌編」
探し物


探し物 本編

2009.05.23  *Edit 

【前書き】ほんのりグロ描写ありますのでご注意ください。女の人の方が、ゾゾッとしてくれるかもしれません。男性にはオエーと思われそうですが、アッサリなのでなんとか……。



 駅の前に、一人の少女がいた。
 長い間、切符売り場の前を行ったりきたりする少女に、声をかける者は誰も居ない。電車は一時間に一本という片田舎の駅だけに、通りがかる人は少なく、居たとしても足早に通り過ぎていく。
「困ったなあ……」
 少女が呟いたとき、改札から一人の女が降りてきた。昼下がりの中途半端なこの時間、この駅に降りる人物は貴重だ。
 少女は駆け寄って、女に声をかけた。
「すみません、ちょっといいですか?」
 茶色の大きなボストンバッグを持った、Tシャツにジーパン姿の女は、その声に驚いて立ち止まった。少女よりずいぶん年上だが、若干幼さも残す優しげな顔立ちの女だ。
 こんな田舎の駅には、観光地どころか旅館の一件もないので、ちょうど帰省したところかもしれない。
「なあに? 何か用?」
「あの、大事な物を無くしてしまって……一緒に探してもらえませんか?」
 涼しげな白いワンピース姿の少女が、心細げに言う。まだ小学生くらいに見える少女は、確かに手ぶらだった。女は、怪訝そうな表情で少女に話しかける。
「お父さんかお母さんは、一緒じゃないの?」
「はい、ひとりなんです」
 駅前には交番もなく、数少ないタクシーも出払ってしまったのか見当たらない。頼れそうな人物は駅員だけだろう。
 長距離の移動で疲れていた女は、腰をかがめ彼女に目線を合わせながら、困ったように微笑んだ。
「ごめんなさい、急いでいるの。駅員さんに聞いてみたらどうかな?」
 改札を指差しながら優しく伝えた女だったが、悲痛な少女の言葉に胸を痛めた。
「少しだけでいいんです……一緒に探してもらえませんか?」
 女は腕時計をチラリと見ると、しょうがないわねと息をついた。
「何を落としたの?」
「あの……いろいろ……全部……」
 ガランとして遮蔽物の少ない駅前のアスファルトを、女はぐるりと見渡す。
 鞄や財布のようなものは見当たらない。
「本当に、ここで落としたの?」
「ずっと探してるのに……どうしよう……」
 可愛らしい少女の顔は病的に白く、今にも泣き出しそうに歪められている。
 困った女がしゃがみこみ、大きな溜息をついたとき、女の肩越しに見える小さな建物に目を留めた少女は、笑顔で叫んだ。
「――あっ、あそこかもしれない!」
 少女の視線の先には、駅に隣接する公衆トイレがあった。
 田舎の公衆トイレは、少し離れていても匂いがキツい。女は近づくのをためらったが、少女に手を引かれてしまったため、しぶしぶその薄暗い建物の中に入った。

 ◆

 古い木造のトイレは、静かだった。
 ひび割れた鏡。青錆が浮いた蛇口の先から、ときおり雫がポタリと落ちる。蛍光灯にまとわりつく数匹の蛾を避けながら、少女と女は奥へと進んだ。
 黒ずんだ床のタイルから上がってくる冷気に、薄着の女はぶるりと体を震わせた。
 3つ並んだ個室の一番奥を指差した少女は、笑顔で言った。
「あそこの、中だと思うんです」
 少女に促された女は、個室の中へと目線を向けた。
 古い公衆トイレに相応しい、薄汚れた和式便器。トイレットペーパーホルダは壊れたまま放置され、ティッシュの屑が散らばっている。立ち込める悪臭に顔をしかめながら、女は個室の中を見回した。
 棚にも、ドアの裏の荷物をかけるフックにも、忘れ物らしき荷物は無い。あるのは、床に置かれているプラスチックのゴミ箱が一つ。汚物入れとして使われているものだが、乗降客の少ないこの駅では、利用する者もあまりいない。何年も置かれて続けているそれは、こびりついた汚れが醜い。
 女が振り向くと、少女はそのゴミ箱を指差した。
「いや……あれは、ただのゴミよ?」
「あの中に、きっとあると思うんです!」
 少女に促された女は、吸い寄せられるように個室の中へと歩み、そっと汚物入れの蓋をつまみ上げた。中にビニール袋が敷かれているのか、ガサリと音を立てた。
 汚い。
 気持ち悪い。
「ほら、何もないわよ。ゴミ袋が入っているだけ……」
「ちゃんと、中を見てみてください!」
 少女の叫び声が、女の頭に響く。
 なぜだか、逆らえない。
 女が蓋を持ち上げ、中を覗き込んでみると……。

「――ねえ、あったでしょう?」

 女は、奇声を上げながら、ゴミ箱の蓋を放り投げた。
 中に見えたものは、ピンク色の小さな塊。女が以前、一度だけ目にしたことがあるもの。
 そうだ、この場所だった。
 制服を着たままの私は、涙と血をたくさん流しながら、この汚物入れに、あれを捨てたのだ。
「私の全部、あの中に入れて、捨てられちゃったの」
 少女は、女の体に抱きついて「会いたかったわ、お母さん」と嬉しそうに囁いた。(了)


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【後書き】補足&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたい方のみ反転を。
(携帯の方は「テキストコピー」でたぶん読めます)
 この話は、もともと”キラキラファンタジー”を書こうという発想で、プロット無しに書き始めたものです。別でやってる長編からの逃げがいけなかったのでしょうか……話がどんどんオカシナ方向へ転がり、気づいたらこんな感じになってました。この話だけじゃ、キラキラファンタジー書き(当社比)として、ブランドに傷が! と焦った結果、なんとか補完する話をと考えたのが、続編です。この話からコメディに転がすの、なかなか大変でした。ということで、ぜひ読んでやってきださいませー。
※2009年6月 微修正させていただきました。(初短編作品ですし、未熟な過去の遺産としてあまり変えずにおきます……)

※続きや詳細は想像にお任せ……というのもアリですが、ハッピーな続編『拾い物』(コメディ&ファンタジー)を書いてみましたので、ご希望の方はぜひ。





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~ Comment ~

そうきたか… 

いや、実はもっとすごいものを想像していたので、これは、グロイと言うより、切ない、悲しい物語でした。
母親になる資格のなかった彼女には辛い現実だったかも知れないけど、生んでももらえず捨てられた子どもの想いとは、母を求める余り、いつか歪んでしまうのかも知れない。
そんな余韻が残りました。

Re: そうきたか… 

>fateさん

こちらにも感想どもです☆
久々にこの話を読み直して、我ながらオエーと思いました。
なんでこんな話書いたのやら……視点も神視点とか今じゃ全く書けないし、不思議です。

グロより切ないとのご意見、嬉しい限りです。
ラストは「お母さんすきー」って言わせてるつもりだったので。
そこがもし「お前もしねー」って襲ってエンドだと、まんまB級ホラーですわなw

そういえば、続編の方を改稿途中で放置してたの思い出しました……これもそのうち。(* ̄┏Д┓ ̄*)ゞ
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