喉ニ小骨ガ

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「砂漠に降る花」
第四章 女神降臨


第四章 プロローグ2 ~再会がもたらすもの(1)~

2009.07.06  *Edit 

 舞台上で抱き合うデリスとナチルに全員が目を奪われる中、サラは二人の脇をすり抜けそっと階段を下りていた。
 開かれた扉を背でおさえるリコに近づき「やったね!」とささやきあう。

 赤い花の跡地で、デリスが呟いた娘たちの名前の中に『ナチル』の一言を拾ってから、サラはすぐにリコへ相談したのだ。
 そして、このサプライズの準備をした。

「ナチルにも、後で事情を聞かなきゃいけないけど……もう少し後でいいよね」
「はい……本当に良かったです……」

 サラの呟きに、リコは嗚咽交じりに返事をする。
 小さなナチルが、ずっと胸の奥に閉じ込めていた気持ちを、思う存分解放させてあげたい。
 デリスにも、今まで悲しい涙ばかり流した分、今は嬉し涙を流させてあげたい。

 少しずつ状況を飲み込んでいった会場内にも、ナチルを知る侍女や魔術師たちを中心に、すすり泣きの声が広がっていった。

  * * *

 ナチルのハンカチが二人の涙でびっしょりになった頃、パーティは再開した。

 舞台から降りたナチルには、魔術師長をはじめ、昔馴染みの大人たちが取り巻いた。
 特に、あの気難しい魔術師長が笑顔を浮かべていることに、サラは心底驚いた。
 魔術師長の小さな瞳はぎょろりと見開かれ、少し黄ばんだ歯と上の歯茎がくっきりと出る……かなり恐ろしげな笑みだが、ナチルは嬉しそうに目を細めている。

 デリスは「一度顔を洗ってまいります」と退席した。
 国王と王子たちも、ナチルを中心にできた人だかりを、感慨深げに見守っている。
 デリスの感情にシンクロしたのか、泣きじゃくっていたルリ姫は、リグルになだめられてようやく落ち着いたところだ。

 サラはといえば、リコと一緒に扉の前で立ち話中。

「ねえ、ちょっと遅いんじゃない?」
「そうですね……誰かが抵抗しているのかもしれませんね……あっ、足音が聞こえてきました!」

 リコがよいしょと言いつつ、魔術を使いながら扉を押し開けた。
 重厚な木製の扉の奥は、音楽隊が荷物を置いたり着替えたりする控え室に繋がっている。
 音楽隊のメンバーはこの王城に勤めているわけではなく、貴族が主催するイベントを中心に、あちこちへ飛び回っており、今日は来ていない。
 代わりに控え室に居るのは、図体のデカイ三人の男。

「くそっ……なんで俺までこんな格好を!」
「まあいいじゃねーか。美味いモン食って機嫌直せって」
「そーだよ。久しぶりに愛しのサ」
「てめえっ!」
「こらこら、武器が無い今の俺らは、こいつには敵わねーぞ?」
「ゴメンゴメン。まあ今日は楽しもうよ、ね?」

 それは、リコにだけ聞こえた会話。
 ムフフといやらしい笑いを漏らしたリコに、サラがツッコミを入れようとしたとき、廊下の角からその姿が見えた。

「アレク! カリム! リーズ!」

 待ちきれず、出迎えに駆け出すサラ。
 リコも慌てて後を追う。
 扉が大きな音を立てながら閉まると、その閉ざされた空間は懐かしい空気に包まれた。

 薄暗い廊下の中で、再会を喜びはしゃぐサラ。
 王城に来てから何日も経っていないというのに、少し涙ぐんでしまうほど嬉しい。
 リーズとは先日会ったけれど、仕事が溜まっているからと、慌しく去ってしまったし……。

「アレク、カリム……元気だった?」

 サラのたっての希望もあり、三人は特別に、王城への入場とパーティへの参加を許可された。
 アレクは、ナチルの保護者として。
 カリムは、サラと同じくネルギの代表として。
 リーズは、エールの専属魔術医として。

 見違えるほど“男前”になった二人を見上げながら、サラは少し照れ笑いを浮かべた。

  * * *

 王城の結界は、未だに緩められていない。
 城門近くに陣取り、常に刺客を識別していた月巫女も、もう役目を解かれた。
 暗部に光が当たった結果、今この王城は新たに信頼と希望を得て、少しずつ開かれようとしている。
 サラの信頼する三人が、生まれ変わった王城の最初の客だ。

「ああ。俺たちは相変わらずだ」

 サラの短くなった髪をくちゃくちゃにかき混ぜながら、アレクが言う。
 人を見下すような三白眼も、口より先に手が出るのも相変わらず。
 クロルの過剰なスキンシップのせいか、王子たちに次々と求婚されたせいか、異性との接触に抵抗感が薄れたサラは、アレクから頭を撫でられるくらいでは動じず……むしろホッとする。

「黒騎士フィーバーのおかげで、道場も満員御礼。第三道場の建設も始まったし、店も増えてきたし、自治区はどんどん変わってるよ」
「兄さん、ほどほどにしてよね。俺このまんまじゃ本当に“棟梁”って呼ばれるようになっちゃうよー」

 情けないリーズのツッコミに、思わず声をあげて笑うサラとリコ。
 エールへの治療係もしばらく必要だし、リーズが盗賊の砦に戻れるのはいつのことやら。

 くすくす笑うサラの頭から、アレクの手をさりげなくどけるカリム。
 薄暗い中でも、日に焼けた浅黒い肌と、輝く白い歯が印象的だ。
 少し髪が伸びたせいか、頬の辺りがシャープになった気がする。
 野生的な鋭い眼光は相変わらずだけれど、サラを見下ろすその瞳には愛情が溢れている。

「俺は、強くなったぞ。手合わせしようぜ、サラ」
「うん、いいよ。カリム王子」

 サラの切り返しに、カリムの顔色はみるみる赤くなっていく。
 思わず噴出すリコ。

「カリム……王子って……あははっ!」
「てめー、リコ! これ以上笑ったらぶっ殺す!」

 ウサギのようにぴょこんと飛び跳ねると、するりとリーズの背に隠れるリコ。
 カリムのあしらい方など熟知している。
 リーズが、胸ポケットから頭をのぞかせるスプーンに手をかけると、すかさず距離を取った。
 今日のスプーンも、金と銀のドレス&レースのヴェールをかぶっておめかし済みだ。
 どうやら、リコがお裁縫の練習も兼ねて、二匹の衣装を着々と増やしているらしい。

「まあまあ、いいじゃない。すっごく似合ってるから。カッコイイよ!」

 サラは褒め言葉と、ニコニコ笑顔でカリムの腕を引っ張る。
 言葉に詰まり、大きな手のひらで口元を覆うカリム。
 袖についた金色の房飾りが、サラの目の前でピラピラ揺れた。

 三人が着ているのは、どこをどう見ても立派な……王子服だ。
 先日エールに会いに来たリーズが、あまりにも小汚い格好をしていたことにショックを受けたデリスが、「あのような服装で王子に面会することは、二度と許しません!」と言った。
 その発言を受けて、国王が三人に用意したのが、この服だ。

 純白詰襟の上着は丈が長く、膝のあたりまで伸びている。
 リコがアバウトなサイズを報告しただけだが、直接採寸したかと思うくらいのピッタリサイズ。
 金のボタン、金のチェーン、金の房飾りが高級感を演出し、膝下を引き締めるブーツは国王の履いているものとお揃い。

 ナチルに怒られなければ、無精ひげを放置するようなアレクとカリムも、今日のお肌はつるつるだ。
 ナチルとリコによって、髪も眉毛も整えられて、ちょっとだけお粉も叩かれている。

「三人とも、とっても素敵……」
「ええ……本当に」

 人というものは、これほど見た目で変わるのかと、サラは感心しつつ三人を見比べた。
 あのリーズですら、ちょっと頼りなさげだけれど、ちゃんと王子に見える。
 リコの目には、残念ながらただ一人しか映っていないようだが。

 サラは、弾む気持ちを抑えきれずに言った。

「さ、行こう! 皆を王城の人たちに紹介するから!」

 一つの予感を胸に、サラは自らその重い扉を押し開けた。


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【後書き】↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたい方のみ反転を。
(携帯の方は「テキストコピー」でたぶん読めます)
 いやーな展開になりました。話がどんどん長くなる……みゅいーんと伸びるスライムのように……。ただ「わーい、再会っ。久しぶりー」というだけで一話使ってもーた。なぜだろう。人数多いせい? まあ、前回濃厚だった反動ってことでご容赦ください。次回はついに主要メンバー勢ぞろいです。誰がどの会話してるのやら、ひどい混線状況になってきました。作者の書き分け能力も限界数値振り切れ気味です。この先、何人かは黙らせよう。とりあえず、このプロローグのメインキャラはカリム君になります。
 次回、プロローグラスト……とはいきません。見通し甘すぎました。サラちゃんプロデュースの裏サプライズは意外な方向に?



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