喉ニ小骨ガ

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「砂漠に降る花」
第二章 王城攻略


第二章(24)天邪鬼な魔術師

2009.05.04  *Edit 

決勝戦の直前、サラが提案したマジックアイテムの交換は、あっさりと受け入れられた。

バリトン騎士は、あまり魔力がないのだろう。
不思議そうにお守り袋を手の中でくるくると転がした後、指輪を持っていないことだけを念入りに確認し、サラを解放した。

光の精霊系のアイテムは希少らしく、盗賊たちもかなり気を使って隠し持っているというし、これは何だと騒がれずに済んだことでサラはホッとした。

 * * *

魔術師はまだ休憩から戻っていなかった。
今朝までは闘志溢れる挑戦者たちで埋め尽くされていた控え室に、今はサラ以外誰も居ない。
少しさみしいけれど、あの魔術師とサシで過ごすよりは1人の方がマシかもしれない。

サラは、頭の中で戦略を練り始めた。

基本は、相手の魔術をなるべく受けないこと。
自分の武器であるスピードと黒剣だけで決着がつけば、それでよし。
黒剣様には、さっきあれだけ謝ったし、きっと許してくれたよね?

サラは、腰につけた黒剣を撫でさすりながら、どうかお願いしますと神頼みならぬ黒剣頼みをした。

次の仮定。
もしも、スピードや剣術で勝てなかったら?

前の試合、緑の瞳の騎士に剣筋をすべて見切られてしまったし、過信は禁物だ。
これから戦う魔術師は、アレクと武力が同等クラスということは、スピードも忍者レベルということ。
重ねてスピードアップ系の魔術でもかけられたら、サラに100%勝ち目は無いだろう。

魔術師があの試合を見ていたなら、サラの弱点がスタミナだということにも気づいているはず。
足を使うとしたら、試合開始からしばらく様子を見る程度にしておいた方が良さそうだ。
初っ端から走り回って、後半へばっては命取りだ。

となると、やはり決勝では、魔術返しの封印を解くしかない。

魔術を受ける前に、相手とそれなりにコミュニケーションを取っておかなければ。
得体の知れない魔術師から、いきなり攻撃系の上位魔術を受けたら、完璧に受け止めきれる自信はない。
きっと自動反射するか、ヘタすると増幅反射してしまう。

一応、アレクからは、あらゆる種類の魔術を経験させられていたサラだが、アレクの過去と魔術師の強さを聞いてしまっただけに、考えれば考えるほど不安が沸いてくる。

アレクの不思議なメガネでは、確か7色のオーラが見えたとか言ってたっけ……
今までの試合では、特に目立つような攻撃も、派手な上位魔術も使っていなかったみたいだけど、それは私と同じで隠していたのかな。

毎試合すんなり勝利していった魔術師は、一球入魂タイプのサラとは大違いだ。
それは、対戦相手に恵まれたことだけでは、説明がつかないような気がする。

どうもあの魔術師には、アレクや自分の想像を超える何かがありそうだ。

 * * *

サラは、自分が不利になるであろう最悪の状況を想定してみる。

仮定3。
もしも、魔術反射を破られてしまったら?
例えば魔術師は防御に長けていて、強力な結界をはれるとか。

だんだん複雑になってくる設定に、サラは1人2役となって演技しつつ考える。

まず自分が、魔術師の攻撃魔術を反射するとしよう。
はい、魔術師が、自分の反射を結界で受け止めました。

……その後、いったいどうなっちゃうんだろう?

サラが直接触れれば、結界は消える。
しかしそこまで接近すれば、魔術師はまた忍者へと変化して、サラと武力勝負に打って出るだろう。

魔術師の直接攻撃では、杖が武器になるのだろうけれど、はたして黒剣と戦えるほどの力があるアイテムなのか?
ドラクエでは、杖の攻撃力って剣より全然弱かったけれど。
アレクに、そのあたりも確認しておけばよかったな……

サラの思考は、そこで行き詰った。
将棋で例えるなら、飛車と角、どちらを動かせばよいか迷うような構図だ。
王を取れるのは、魔術反射か、黒剣か?
それとも、さきほどの試合で歩が金と成ったように、意外な手段があるのか?

何か策が見つかりそうなのに、なかなか思いつかない。

サラがうーんと頭を抱え込んだとき、蝶番が外れんばかりの勢いで、控え室のドアが開けられた。

「マスク少年に、質問がありまーす!」
「はぁ?」

飛び込んできたのはもちろん、決勝戦の相手。
ファースという名の、凄腕魔術師だ。
手にした杖をいたずらに振り回しながら、魔術師はサラに近づいてきた。

長い年月を経てきたであろうその杖は、油が染み込んだような艶のある色合いで、魔力の無いサラが見ても逸品と分かる。
そんな重要なアイテムを、あたかも細身のバトンのようにくるくると片手で回し、空中に放り投げては上手にキャッチ。
こんな場所、こんな立場でなければ、サラは無邪気に手を叩いて喜んだに違いない。

「ラスト!」と言って、高く杖を放り投げると、魔術師は後ろ手にキャッチ……

しようと思ったが、あいにく天井の高さが計算されていなかった。
勢い良く天井にぶつかった杖は、無残にも床に叩き付けられた。

「ああっ、杖がっ!」

慌てて杖を拾い、ふーふーと息をかける魔術師。

なんて、緊張感の無いやりとりなんだろうと、サラはガックリうなだれた。

 * * *

「そういえば、少年に質問があったんだよね」

なんだっけなぁと呟く魔術師。
アレクの話からイメージしていた人物と、目の前の人物はかけ離れている。
サラは、この相手とどう戦うかのシミュレーションも忘れて、ぼんやりと目の前の人物に見入っていた。

こうして正面で見ると、案外……いや、かなり綺麗な顔立ちをしている。
フードに隠れた髪と瞳は、淡いグレー。
歌舞伎や茶道の世界に居そうな、少し中性的な雰囲気の男だ。
緑の騎士のようなカチッとした騎士服か、もしくは着流しなんてのも意外と似合うのではないだろうか。

あとは、メガネもすごく……

「そうだ、あれだあれ」

サラが脳内でメガネ市場に入店しかけたとき、魔術師はぽんと手を打った。

「キミ、また例の条件出してくるの?」

この人は、どこまで本気なのだろうか?
サラは間髪いれず返答した。

「まさか、魔術師に魔術を使うなとは、さすがに言いませんよ」
「でもキミが戦った、あの下品で矮小で筋肉だけがとりえの大男は、キミから大事な剣を取り上げたよね?」

かなりの毒舌発言だったが、サラは馬場先生で慣れていたので、普通にスルーした。

「あれは、仕方なかったんです。勝ったから、別にもういいし……」

ふーん、と呟いた魔術師の周りに、少しずつ黒い靄が見え始めた気がして、サラは目を凝らした。

「そこまでして、キミは隠したかったんだね?」


『魔力が無いってことを』


サラの頭は、一気に戦闘モードに切り替わった。
人の魔力が見えるという、貴重なアイテムを簡単に手放すくらいだ。
この魔術師は、元々あのアイテムと同等の力を持つのかもしれない。

警戒を強めたサラに、魔術師は重ねて聞いてくる。

「もう1つ質問。キミが優勝したら、叶えたいお願いって何だい?」
「……なぜソレを、アンタに言わなきゃいけない?」

サラが慎重に言葉を選ぶと、逆に魔術師からは緩い言葉が飛び出す。

「実は俺、叶えたい願いなんて1つも無いんだよね」

壁際の椅子にどすんと腰掛けて、魔術師はまた懲りずに杖を回し出す。

「だって、地位も名誉も金も女も、ぜーんぶ持ってるし。せめて顔がブサイクとか、オツムが弱いとか、アソコが不能だとか、何か弱点があれば良かったんだけど、残念ながら何も無くってさ」

臆面もなく告げる魔術師のナルシスト発言に、サラは言葉を失った。
バカと天才は紙一重というけれど、やはり何かに秀でた人間は、ちょっと普通の感性ではないのかもしれない。

一通り自分ラブ発言を語り終えた魔術師は立ち上がり、げんなりしているサラに近寄った。

「俺の唯一の弱点、教えようか?」

サラの返事など待たずに魔術師は、至近距離でささやいた。
サラは、おのずと灰色の瞳に釘付けになる。

「それは、天邪鬼ってこと。人の邪魔をするのが好きなんだ。だからね……」

魔術師は、サラの想像を超える台詞を吐いた。


「キミが欲しがるものを、俺が奪っちゃおうと思ってさ」


人が怒り狂う顔ってけっこう興奮するんだよねと、キレイな顔を歪めてくすくす笑う魔術師の姿を、サラは金髪前髪でシャットアウトした。

こいつは、この世界に来て出会った中で、一番のヘンタイだ!

 * * *

ドSヘンタイ発言を聞いて以降、魔術師を存在しないものと無視していたサラだったが、願いを教えろとあまりにもしつこくねだられ、最後はどうでも良くなってしまった。
かわいらしくおねだりする魔術師は愛嬌があり、餌を求めてハフハフとまとわりつくハスキー犬のようだ。

「はいはい、分かりました。オレの願いを教えますよ」

犬バカな飼い主気分でサラが言うと、魔術師は尻尾を振って喜んだが……
その答えを聞いて、意気消沈した。

「キミが相当のお人よしだってことは、試合を見て分かってたけどね」

まさかそこまでだったとはと呟くと、よろけながら椅子に座り、顔を手のひらで覆ってため息をつく魔術師。
頭痛薬のCMに出てくる母親のように、こめかみに手を当てた大げさなポーズだ。

サラが答えたのは『世界平和』の一言。
それが嘘ではないと察した魔術師のリアクションに若干苛ついたサラだったが、もし魔術師が”勇者”としてその願いを叶えてくれるなら、それはそれでアリかもしれないと思ってしまった。

「訂正しよう。俺は単なる天邪鬼ではない。人を困らせて楽しむ、正統派の天邪鬼なんだ!だから、もっと困るような願いを考えてくれ!」

そんな風に迫られ、サラはなんて我侭な男だと呆れた。

「例えば、狙ってる女がいるとか、欲しい土地建物があるとか、手に入れたい宝があるとかさー」

再び餌くれとハフハフ迫る魔術師。
サラはげんなりしつつ、首を横に振る。
この魔術師は、人への嫌がらせに命を賭ける男なのだということは、良く分かった。

アレクはああ見えて意外と律儀な性格だから、きっとコイツの術中にはまってしまったのだろう。
もしも魔術師が「5年後リベンジしに来い」と直球で言っていたら、アレクは死に物狂いで修行し、魔術師に対抗できる力を得て、サラの代わりにここへ立っていたはずだ。
わざと魔力が見えるメガネを渡し、弟子を作れと告げたことが、この魔術師流の嫌がらせだったのだ。

無言で首を横に振り続けるサラに、魔術師はうーんと考えた後、良いアイデアがひらめいたとばかりに、両手を叩いて瞳を輝かせた。

「じゃあこうしよう!キミの大事な恋人を、俺が奪うってのはどう?」

その発言は、サラの心の琴線に触れた。
サラは椅子から立ち上がり、金髪の前髪の隙間から、上目遣いに魔術師を睨み付けた。


「それだけは、許さない。その前に、彼はアンタみたいなヤツ相手にしない!」


本気の怒りをにじませた、サラの低い声。
つい本音で漏らしてしまった台詞の矛盾点に、サラは気づかなかった。

魔術師は、初めてサラを恐れるようにじりじり後退ると、灰色の瞳に警戒心を浮かべて言った。


「キミ……男が好きなの?」


ゴメン、俺は普通に女の子好きだし、さすがに男とは付き合えないや。
いくらキミに嫌がらせしたくても、それはだけは無理、つーか勘弁。

顔の前でバイバイするように手を振りつつ、壁に背中をへばりつかせた魔術師。

ヘンタイ勝負で、サラが大逆転した瞬間だった。


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【後書き】↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたい方のみ反転を。
(携帯の方は「テキストコピー」でたぶん読めます)
またヘンタイキャラの罠に落ちてしまった……アホな舌戦で一話分終了。チーン。放っといたらこんなやり取り延々と続いちまうわ。とりあえず彼のヘンタイっぷりは試合で小出しにしましょう。ヘンタイなら態度で示そうよです。天邪鬼な彼は、欲しいものが何も無いといいつつ本当はしっかりあるんですが、その辺はまたおいおい。つーか実はファース君、この話に続編があるなら活躍するかも?って方です。なんて遠い未来……まずは足元見ましょ。しかし、ファース君がここで「それは好都合。俺も同じ趣味」と言ってたら、今流行の(?)ボーイズラブな展開になるのでしょうか。それも王道な気もするけど、ここはノーマルに進めときますよー。
次回、ついに決勝戦スタートです。王族チラリと出ます。ファース君の実力もチラリ。サラはやっぱり全力少年で。



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