喉ニ小骨ガ

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「砂漠に降る花」
第二章 王城攻略


第二章(13)再会と、2匹の猫

2009.04.23  *Edit 

城の真上に、華麗な花火が上がった。
城下町の人々は皆歩みを止め、空一面に広がる色とりどりの光に歓声をあげる。

サラは「たーまやー」と心の中で呟きつつ、久しぶりに見る花火を堪能した。
中学2年生の夏、お母さん&パパたちと夏祭りに行って以来の花火。
去年は受験生だったから、季節のイベントは誕生日とクリスマスだけだった。

いろんなことを我慢して、せっかく受かったのにな……

「サー坊、花火見えた?」

サラの斜め後ろから、リーズが声をかけてくる。
満員電車のような人ごみのなかでも、リーズの頭はぴょこんと飛びぬけていて、目印に便利だ。

「うん。見えたよっ」
「なーんだ。俺、肩車してやろうと思ったのに」

そんなにチビじゃないやい!と、サラはリーズの胸を軽く殴るフリをした。

 * * *

サラたち6人は市場通りをぶらぶらした後、少し裏通りに落ち着ける店を見つけた。
あまりの人の多さにもみくちゃにされた6人は、ややぐったりしながら席についた。

武道大会は5年に一度のお祭りと噂には聞いていたけれど、ここまで盛況とは思わなかった。
経験者はアレクとナチルだけ。
ナチルはその頃あの過酷な境遇にいたが「武道大会では……稼がせていただきました」と恥ずかしそうに言っていたので、まあそれなりに楽しく過ごしたようだ。

「では、サラとカリムの健闘を祈念しまして……乾杯っ!」

朝一番で出場申請を済ませたサラとカリムに、皆がグラスを寄せてくる。
サラは「ありがとっ」と言って、カチンをグラスを合わせると、中身のジュースを豪快に一気飲み。
リーズの音頭で始まった宴会は、大いに盛り上がった。

アレクは、多少の酒では酔わないようで、酔っ払って口を滑らせがちなリーズを下ネタでいじっている。
出場しないことになったリコは、ちょっとだけアルコールの入ったカクテルを注文し、慣れないお酒でほんのり赤くなっている。
普段は柱の影からそっと眺めるだけのアレクを、今は目をとろんとさせて凝視しているが、たぶんアレクは気付いていないだろうし、リコも覚えていないかもしれない。

カリムは、アレクたちのやり取りを適当に聞き流しつつ、ジンジャーエールをチビチビ飲んでいる。
気が効くナチルは、料理を取り分けたりお代わりを頼んだり、たまにアレクへ鉄拳をお見舞いしたりと、見事な采配。
サラも、美味しいものを食べて笑って、緊張や不安に押しつぶされそうな心を解放していった。


食事もあらかた片付き、会もそろそろお開きという頃に、サラはナチルから声をかけられた。

「では、ここでサー坊様にプレゼントがありまーす」

響き渡る拍手の音で他の客からも注目され、サラはちょっと照れながらナチルの差し出す紙袋を受け取る。
袋を開けてみると……

「うわっ!」

入っていたのは、黒く艶やかな生地の騎士服だった。

サラは今まで、オアシスの男が普段着ているのと同じ、だぼっと生地がたるんだTシャツのような上着に、幅広のハーフパンツを着て過ごしていた。
いずれも、麻と綿が混ざったような、ゴワゴワして強い生地。
こんな高級そうな生地を触るのは、この世界に来てから初めてだ。
実際に城を守る騎士によく見られる、豪華な飾りはついていないが、その分シンプルで充分カッコイイ。

「実は、ワタシとリコ様で縫ったんですよ」
「ありがとう!嬉しい!」

サラは丁寧に畳まれていた服を広げる。
すると、服の間からバサリと何かが落ちた。

「あっ、それもつけてくださいね?」

それは、金髪のカツラだった。
アレクが、サラが噂の黒騎士だと対戦相手にバレないように、わざわざ取寄せてくれたとのこと。
さらに袋の底には、なにやら説明文のついた黒い布。
リコに読み上げてもらったサラは、しばし絶句した。

『空気は通すが砂は通さない!3層構造で丈夫長持ち!砂漠のお供に……顔面ガード帽(色:ブラック)』

目から下全体を覆い隠す、いわゆる目出し帽だった。

「いろいろ、ありがと、ね……」

どうやらサラは、前回大会のアレク以上に、怪しい騎士として戦わなければならないらしい。

 * * *

サラが「月光仮面セット」と名づけた、その変身グッズを紙袋にしまっているとき。
背後から誰かが近寄ってくる気配がして、サラは戦闘モードで振り返った。

「おっ!やっぱりおめーらか!」

そこにいたのは、意外な人物だった。
サラの救いの神こと、あのひげもじゃ盗賊だ。
相変わらず立派なひげをもじゃらせて、ニヒルな笑みを浮かべている。

「ヒゲオヤジ!」
「よー、アレク。5年ぶりじゃねーか!」

立ち上がったアレクを、ガッシリ抱きしめたと思いきや、整ったアレクの顔に張り手を一発。
メガネをかけていたらきっと吹っ飛ばされて壊れただろう、かなりの威力だ。
アレクもお返しにと、ひげもじゃのアゴに拳骨アッパーを返す。

「痛えな」
「ああ、こっちもだ」

頬とアゴをさすりながら、2人は満足そうに笑いあった。
これが盗賊流のあいさつということなのだろう。
いや、リーズが若干引いていたので、この2人限定のあいさつなのかもしれない。

リーズとカリムは、大きくゴツい手でワシワシと頭を撫でられ、サラとリコは「姐さんとお嬢ちゃんも元気そうだな」と微笑まれた。
かなりガサツだけれど、なかなかイイヤツだ。
ひげもじゃに会うのは初めてのナチルが、いつもどおり丁寧に挨拶すると、ひげは少しそわそわと後方を気にした。

「アレク、このちびちゃんが、もしかしてお前の……」

ひげもじゃが何か言いかけたと同時に、リーズがひっと息を飲んだ。


『アーレークー……』


地の底から響き渡るような声とともに、ひげもじゃの後方に1人の女性が現れた。
一見、盗賊の仲間とは思えないような、ゴージャスなドレスを身にまとった美貌の女性だ。

真紅のタイトなドレスは、彼女の体にぴったりとまとわりつき、深いスリットからのぞくスレンダーな白い脚がなまめかしい。
美しいシルバーの髪が豊かに波うち、大きく開けられたドレスからのぞく胸の谷間へと垂らされている。
リコを軽く凌駕するそのボリュームに、サラは目が点になった。

彼女はアレクを睨みながら近づいてくる。
アレクと同じ漆黒の瞳には、怒りの炎が燃えているようだ。

「あんた、幼女のメイドを囲ってるって、本当だったのね!」

カツカツと、ブーツのかかとを鳴らしながら、歩み寄る女性。
元々背の高い彼女は、ブーツのヒールによってさらに上げ底され、アレクと同じくらいの目線だ。
サラが人生で初めて見る、妖艶で雌豹タイプの美女だった。

「エシレ!」

アレクは逃げようとしたが、しばし硬直したことが時間のロスとなり、あっさり美女に捕まった。
アレクのシャツの襟元が、美女の力強い腕で引き寄せられ……

「お仕置きよっ!」

アレクの顔と美女の顔が、ぴったりと密着した。


サラは、初めて至近距離で見る”生うにうにチュー”に、目が釘付けになった。
ショックで思考停止していたリコが、何秒か遅れで悲鳴を上げかけたが、その直前にリーズが爆弾発言を落とす。

「いいかげんにしろよ、エシレ姉さんっ!」

こんな公共の場でと、しかめ面のリーズ。
アレクから顔を離した美女は、「私にそんな生意気なことを言う口はどれかしら?」と呟き、リーズにもアレクと同じお仕置きをくだす。
精気を吸い取られたのか、アレクはテーブルにつっぷして動かない。

美女はリーズが涙目でゴメンナサイと言うまで拘束した後、ゆっくりとリーズから顔を離し、サラたちに微笑んだ。

「さ、ワタシと次にあいさつしたいのは、だぁれ?」

サラとリコは顔を引きつらせ、カリムはそっとひげもじゃの影に隠れた。
ナチルだけは、けろっとした表情で「アレク様のお姉さまなら、私も容赦しませんわ」とファイティングポーズを作った。

 * * *

エシレは、現在27才。
アレクとリーズの姉、つまりおばちゃんの子どもつながりだ。

「んじゃあらためて、カンパーイ!」

明日があるからとしぶるアレクを姉の権威で押さえつけ、なし崩しで2次会がスタートした。
ひげもじゃは、盗賊内トーナメントを勝ち抜いて、明日から始まる武道大会に参加することになったと嬉しそうに報告してきた。
現在ひげもじゃの一番の恋人であるエシレは、観光を兼ねてくっついてきたそうだ。

「気付いたら、こいつが荷物の中に入ってたから、さすがの俺もちびりそうになったぜ」

旅の荷造りを手伝うからと、ズダ袋に重い缶詰をみっちり詰め込んだエシレは、出発直前にその缶詰を抜いて、自らが袋に納まったという。
かなり無茶な話だが、もしかしたら例のアメリカンな挨拶と同様に、このへんも盗賊ニアンジョークで、ちょっと大げさなのかもしれない。

「だって、可愛い弟たちに会いたかったんだもの」

ひげのひざの上に座り、その首に細い腕をからませて、もじゃっとしたあたりに頬を埋めながら話すエシレを、案外タフなリーズ以外は直視できずにいる。

「へー。でもせっかくなら、姉さんも出場申請すればよかったのに。魔力強いんだからさー」
「いやよ。私、野蛮なこと嫌いなのっ」

白く細い指で、ついっとひげの胸元をなぞりながら、エシレは答える。
金髪ヅラの前髪のスキマから見ていたサラは、「あなたの態度がすでに野蛮ですよ」とツッコミたかったが、エシレのうにうにチュー攻撃を恐れて口をつぐんだ。

「リーズ、あんたは出ないの?そのスプーン……」
「わぁっ!」

落ち着いて会話していたリーズが、突然慌てだす。
バタバタと長い両腕を振って、何かをごまかそうとしているしぐさが、明らかに怪しい。
ひげは、ひざのうえのエシレを軽く片腕で抱きなおして向きを変えると、ズボンのポケットから何かを取り出した。

「そういや、ちょうど明日の朝お前んとこ寄ろうと思ってたんだ。手間がはぶけたな」

ひげが差し出したのは、5つの小袋。
ちょうど手のひらサイズの、黒い巾着袋だ。

「リーズ、お前これ頭領の部屋に忘れてっただろ?」

頭領という単語にビクッとして固まったリーズは、恐る恐るその小袋に手を伸ばす。
リーズ流の定番おしゃれアイテム、ポケットチーフならぬポケットスプーンが、カチャリと音を立てた。

「いいなぁ。これ私も欲しいな」
「俺の分、大会が終わったらお前にやるよ」
「ホント?嬉しい……」

イチャイチャし始める恋人たちと対照的に、リーズの表情は固い。
酔いはすっかり覚めてしまったようだ。
この小袋を砦に忘れてしまったことが、それほどマズイことだったのだろうか?
心配げに見守るメンバーに、リーズはガバッと勢い良く頭を下げた。

「ゴメン、リコ!これがあったら、君も大会に出られたかもしれなかったのに!」

こんなものに、一体どんな力があるというのだろう。
サラは、小袋を凝視する。
リーズは、アレク、ナチル、カリム、リコ、そして最後にサラへと、小袋を配った。

サラが小袋を手にとっても、何も変わらない。
だが、他の4人は違った。

カリムは、落ち着いてはいるものの、怪訝そうに眉根を寄せながら小袋を摘んでいる。
アレクとナチルは、手にしていた箸を取り落とし、リコは目をまん丸にしてリーズを見つめた。

いや、正確にはリーズの胸元を。


『ダーリンたら、本当にうっかりさんなんだからぁ』
『今の今まで、本当に忘れてたんでしょー。まったくぅ』
『でも、そんな抜けてるとこも好きだな』
『あっ、あたしだって好きだもん!』


状況を察したリーズは、リコをチラッと見て言った。

「えっと、このスプーンはね、実は……」

歯切れが悪いながらも、一生懸命言葉をつなぐ。

「そう、実は、光の妖精の……」

リコは、ゴクリと唾を飲み込む。


「飼ってた猫が、いたずらで変化させられたんだ!」


なあ、猫ちゃん?

リーズが胸元のポケットをさわさわ撫でる。


『そ、そうだ……にゃん。あたしたち、本当は猫にゃん』
『光の妖精に、いたずらされちゃったの……にゃよ』


アレクは、肩を震わせたかと思うと、他の客が驚くくらいの大爆笑。
リコは「やだっ!カワイイっ!」と瞳をキラキラ輝かせた。
ナチルは「世の中には不思議なこともあるものですわね」と、感心しきりでうなずく。

サラは、彼らの台詞の意味がさっぱり分からず、同じように不思議顔のカリムと首をかしげ合った。


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【後書き】↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたい方のみ反転を。
(携帯の方は「テキストコピー」でたぶん読めます)
ヒゲ、また出してしまいました。名前あったんだけど、ヒゲという愛称で通すことに。新キャラは姉でした。そうです、ヒゲとボインにしたかったんです!こんな風にテキトーに決まっていく、この物語の主要キャラ……。沈黙を守っていたスプーンズ、お守りパワーでついに解禁です。これでようやくリコちゃんのリーズヘンタイ度ダウン。でもヘタレ扱いは変わらず。正直に言って引かれちゃうのが怖かった少年ボーイなリーズ君でした。好きな子の相談相手ポジションってなんだかんだ気楽だしね。サラとカリムは魔力が足りなくてスプーンズの声は聞こえず残念。ちなみになぜ猫なのかというと、銀のスプーンという猫餌から。
次回、今度こそ大会スタート。まずは予選をどう切り抜けるか……の前に、姉さん事件です!カリム君の身に何かが起こる?



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