喉ニ小骨ガ

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「砂漠に降る花」
第二章 王城攻略


第二章(5)強さを求めて

2009.04.15  *Edit 

リーズの爆弾発言後「あら、そろそろ煮えたみたいですわ」と、何事もなかったかのように作業を再開したナチル。
サラとカリムも、ぎこちなく「では食器の用意を」と立ち上がる。

リコも慌てて後を追ったが、その視線はナチルから離れない。
鼻歌を歌いながらお鍋をかき混ぜるナチルの、穏やかで可憐な横顔を眺めた。

 * * *

リコは、ナチルの生い立ちに、誰よりも深く同情していた。

幼くして両親と離され、王宮で魔術師として訓練を受けながら育ったリコ。
境遇がナチルと少し似ているようだが、実際はまったくちがう。

リコにとって、王宮生活で辛いことといえば、わがままな王女の嫌がらせくらい。
両親は健在で、ときどき会いにきたが、なんとなく違和感とよそよそしさを感じずにいられなかった。
ただそれだけで、リコは傷つき、落ち込んでいた。
もちろん、食べることに困ったのは、つい数日前の砂漠の旅が初めてだ。

同情が、本当におこがましいくらい、ナチルの生い立ちは悲しかった。
しかし、ナチルと自分の違いはそれだけではない。

リコには、大きな夢などなかった。
今は「戦争を止める」と言っているが、ただサラの夢に乗っかっているだけ。
サラの考えに同意し、サラのために力を使うというのは、リコにとって「自分の価値」を見出すことができる、お手軽な方法だと思う。

そして何より違うのが「強くなりたい」という貪欲さ。

強い人間に憧れつつも、自分には何かが欠けていることを、リコは痛感していた。
サラを守ると口では言っていたものの、守られてきたのはリコの方だ。
実際に、守れるような実力もない。
オアシスへの旅路も、毎日休まず鍛錬するカリムやサラを、食事の仕度をするという理由で、そっと見つめるだけの自分。

見ているだけなのは、努力するって辛いことだから。
努力しても、才能の無い自分を見つけてしまうくらいなら、最初からやりたくないと逃げていたから。


ああ、そうか。
なぜ私は、あんなにリーズのことが気に入らなかったのか、今わかった。
リーズは、逃げている自分を自覚させる存在だったんだ。

だってリーズは、頑張れるところはしっかり頑張っているから。
旅の仲間の中で、すべてにおいて中途半端なのは、リコだけ。

だけど、自覚したくなかったから。
リーズのことを「あいつはダメで使えないヤツ」って、自分より下に見ることで、安心しようとしていた。
逃げているのは、自分だけじゃないんだって。

私は、なんて嫌な人間なんだろう……


「リコ?ぼんやりして、どーしたの?」


大きなスープ皿を抱えながら、心配げに見つめるサラの青い瞳。
その中に、自分への信頼の色を見つけ、リコは「なんでもないです」とささやいた。

大丈夫、まだ、取り戻せる。
この瞳が、私を軽蔑の色で見つめる前に、気付いてよかった。


「リコ様、お疲れでしたら少し休まれては?」


ナチルも、丸くクリッとした瞳で、リコを素直に気遣ってくる。
こんなにけなげで可愛い子を、本気で嫌いになれるわけがない。

何も言わないものの、カリムもリーズもリコを気遣っているのが分かる。
リーズは、自分が倒れそうなくらい辛そうな顔をしている。
声をかけたくて、でも遠慮して、口を開けたり閉じたりしているのが、ちょっとオカシイ。

みんなに、置いていかれたくないな。
私もこれから可能な限り、アレク様に鍛えていただこう。
せめて努力だけでもナチルに並ばなければ、あの人を見つめる資格なんて無いわ。

強く、なりたい。
あの人の目に止まるくらい、強く。

ナチルに対するかすかな嫉妬を、心の奥に押しやって、リコは自分の指にはめられた魔道具の指輪を硬く握りしめた。

 * * *

楽しく満ち足りた食事の後、一度部屋へ行って荷物をほどき、着替えてから再びダイニングへ集うことになった。
あてがわれた部屋に入ろうとしたとき、リコに声がかかる。

「あの、リコちゃん?」

振り返らなくても分かる。
低くやわらかなイントネーションは、リーズだ。

「なに?」

少し言葉が冷たく放たれるのは、仕方が無い。
リコは今、少し1人になりたかったから。

「ちょっと、一言だけ伝えたくてさ」

リーズは少しうつむき、目線をリコから外して、後ろ頭をポリポリとかいた。
もう覚えてしまった、困ったときのしぐさ。
猫背で自身がなさそうなリーズは、アレクと並ぶと一回り小さく見えたが、やはり背が高い。
リコの首が痛くなるほど顔をあげなければ、目線を合わせられない。

リーズは、無意味に両手をグーパーさせながら、しばらくもじもじしている。
苛立ったリコが、立ち去りかけたとき。

「リコちゃん、もしかしたらさっき、落ち込んでた?」

サラとカリムは、すでに部屋に入ってしまっている。
廊下には、リーズとリコしかいない。
リーズの声も限りなく小さく、耳の良いリコにしか聴こえないサイズだ。
なのにリコは、きょろきょろとあたりを見回してしまった。

いや、そうじゃないんだと、リーズは独り言のように呟いて、また後ろ頭をかく。
何かすごく、言いにくいことを言いたいようなそぶり。
リーズは意を決したように顔を上げると、リコをまっすぐ見つめて、告げた。

「俺、リコちゃんに、誰か好きな人ができたら、応援するよ」

リコは、ビクッと体を震わせて、瞳を見開く。
瞳に映ったのは、旅の間ずっとリコをフォローしてくれた、細くて優しい瞳。
どうして?という言葉が、思わずこぼれそうになったけれど、ぐっと飲み込んだ。

「ああ、何も言わなくていいから。俺、リコちゃんの味方だよ」

それだけだから、と言い捨てて、立ち去ろうとしたリーズ。

「待って!」

思わず、踵を返したリーズの、シャツの背中を掴んでいた。
今言わなければ、意地を張って2度と言えなくなってしまうような気がした。

「こっちこそ、ゴメンね!」

人に信頼されるって、優しい言葉をかけられるって、なんて嬉しいことなんだろう。
リーズは、本当にいいひとだ。
馬鹿にしてた自分が、一番馬鹿だった。

リーズは、なぜリコに謝られたのか分からず、首から後ろだけ振り向いた姿勢のまま、きょとんとしてリコを見下ろしている。
リコは、泣き笑いのような笑顔で、リーズに「ゴメンじゃなくて……ありがとう」と言った。

 * * *

サラたちが少し部屋でくつろいでから、再び食堂へ戻ったとき、ちょうどアレクが帰ってきた。
後片付けをしていたナチルが、お茶とデザートの用意をいたしましょうと、再び台所に立つ。
アレクは、さほど運動したわけではないだろうに、たいそう疲れたようなため息と足取り。
サラの右斜め前の空いている席にドスンと座り、そのままテーブルに突っ伏した。

アレクが入ってきたとき、トレードマークのメガネが無かったので、サラは一瞬別人かと思ってしまった。

「あれ?メガネはどうされたんですか?」

思わず質問したサラ。
ああ忘れてたなと、アレクは顔をあげて、腰にぶら下げた袋からメガネを取り出した。
特に視力が悪くてかけているわけではなさそうだ。

不思議そうに小首をかしげるサラに、アレクはふっと笑みをこぼす。
このメガネは特別なメガネでね、と言ったアレクの表情から、サラは何か悪寒を感じた。

「このメガネつけると、見えちゃうんだよね」

例えば、といいながら、アレクは顔に似合わないごつい指で、メガネをかけた。
素顔からにじみ出ていた、武道に秀でた戦士のたくましさがややゆるみ、一気に顔立ちのシャープさがひきたつ。

アレクは、ニヤリと笑いながら、女子2名の方を向く。
まずは、リコの方。
ゆったりとした衣装の奥にある豊かな胸のあたりを、アレクは真剣に見つめた。
あたふたと慌ててサラやリーズをみやるリコに、グラリとめまいを起こさせる一言。

「うん、君はかなり、あるね」

TKO秒殺で撃沈したリコ。

次は、じーっと、サラの胸の辺りへ。
目つきが悪く睨んでいるようにも見えるが、口からは穏やかに「うんうん、なるほどね」という意味深な言葉が紡ぎだされている。

その結果。

「うん、君にはまったく無いね!」

2人連続TKO秒殺。
サラは涙目で、この世界に来てからもう何度目かの、リベンジの誓いを立てた。

 * * *

その後カリムに「少しだけあるかな」と言って、カリムにも悪寒を与えたアレクは、1人笑顔でメガネが入っていた袋をまさぐると、はいこれお土産と、手のひらを差し出す。

アレクの手土産は、指輪が2つ。
精霊の加護をうけられる、マジックアイテムの指輪だった。


この世界の魔術は、精霊の加護を受けて行う。
自分の体内の魔力を指輪や杖に集め、精霊に命じることで魔術が発揮されるのだが、どの精霊の加護を受けるかによって、使える魔術の種類は大きく変わる。

火(攻撃)
水(防御)
木(攻撃補助)
風(攻撃補助)
土(防御補助)

この5つが、魔術師が加護を受けられる主な精霊だ。

光(オールマイティ)

というものもあるが、使える魔術師はほとんどいないという。


砂漠の旅の前に、カナタ王子からその説明を聞いてはいたが、実はあのときちょっと眠かったので、各魔術の詳細は記憶していない。
実際に魔術を見たこともあまりないので、なにがどれくらいすごいのか、基準もわからない。
リコが以前ジュートの魔術を見て顔面蒼白になっていたときも、サラは「まあ、キレイ」ってなくらいしか感じなかった。

サラは、魔術というものにあまり興味が無かった。
自分が使いこなせないというのも、大きいだろう。
光の矢のことをあまり思い出したくないという、メンタル的なガードも無意識にかけられていた。

対して、魔術師であるリコと、魔術の恩恵を受けているカリムは、真剣そのもの。

「カリム、君は風の加護に頼りすぎているようだ。剣を振った後に体がふらつくことがあるだろう?素早さも大事だが、まずはもっと土の力を取り入れた方がいい」

その方が下半身が安定するから、剣の威力も上がるし不意の攻撃も避けやすくなると、しごくマトモなアドバイスをおくりながら、カリムに指輪を渡した。
2つの指輪のうちの、茶色っぽい宝石がついた1つを差し出されたカリムは、神妙な顔つきで受け取る。

実は、カリムが子どもの頃に憧れていたのが、トリウムで行われる武道大会だ。
ネルギが戦争を起こすまで、密かにカリムはその舞台に立つことを夢見て、鍛錬を続けていた。
アレクが優勝をさらったというエピソードを聞き、こうしてアドバイスを受けたことで、初対面の最悪なイメージが一気に塗り替えられていく。

カリムはアレクに熱い視線を送りながらコクリとうなずき、つけていた風の指輪を抜いて、土の指輪をはめなおした。
アレクは、よしよしというように、カリムの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
次は、リコの番だ。

リコは、自分が何を言われるのだろうかと、小柄な体をより小さく縮ませる。

「君、ええと、リコちゃんだっけ?」

名前を呼ばれた。
それだけで、リコの胸ははちきれそうなくらいいっぱいになった。

「君は、魔力がかなりあるようだね」

このメガネつけてると人の魔力が見えるんだと、アレクはさっきの意味深な台詞の解説をした。
街に出て、大勢の人物を一気に視界に入れるときなどは、目が疲れてしまうので外しているとのこと。
あーそういう意味だったんだと、サラは手でほっと胸をなでおろし……自爆、そして再度リベンジを決意する。

リコは、ぽやんとしてアレクを見つめていた。
アレクに話しかけられ、しかも魔力を誉められたことで、緊張と興奮は頂点に達していた。
顔を真っ赤にしてうつむいたリコに、アレクが差し出したのは、薄い黄色の宝石がついた風の指輪。
水の精霊の魔術が得意で、常に水の指輪をつけているリコにとっては、意外なチョイスだ。

いったい、どんな理由があるのだろう?


「リコちゃん、なんか普段からトロそうだから、これつけてみてね」


リコ、本日2度目のTKO。

リーズはおたおたしながら「大丈夫だよ、リコちゃんのちょっとトロいとこ、俺は好きだよ」と、さりげなく告白したが、リコの耳にはまったく届いていなかった。


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【後書き】↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたい方のみ反転を。
(携帯の方は「テキストコピー」でたぶん読めます)
リコ根暗だけど、普通の子は自信無くて悩むよね?作者もこーみえて悩んでます。もう大人なのにこんな中身でいいのか……体は大人、中身は子供。逆コナンです。しかしリーズはイイヤツだ。前回自らシモネタ振ったのは、リコのための話題チェンジ目的でした。一方、気配り神経ゼロなアレク様のメガネはぐりぐりメガネ。筋少聴きつつ読んでください。何か嫌なものを見てもそれは人生の修行さー。
次回、再びサラ視点中心で、物語は一歩先へ。今まで人物&背景紹介的な流れだったんで、この先なるべくスピード上げてきますね。弱いはずのサラちゃんが、実は……才能キラリな王道シーンにご期待を。
追記。某別サイト版、本日ユニークアクセスが2000人突破しました。どうもありがとうございます!9日という短い期間でこれだけ多くの方に読んでもらえて、まさに気分は太陽がハッピー、輝いてラッキー(byハッピー・ラッキー・デイ。えんくみ)です。ついでにご感想などもいただけると……いや、贅沢は言うまい。完成度まだまだの試験作ですが、今後ともよろしくです。m(__)m



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