喉ニ小骨ガ

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「砂漠に降る花」
第一章 異世界召喚


閑話2 ~ある下っ端盗賊の、華麗なる転職(後編)~

2009.04.13  *Edit 

どのくらい、硬直していたのだろうか。
「あと1分」の掛け声を聞いて、壁際に立ち尽くして食器棚を見つめていたリーズは、ようやく我に返った。
今、なんだかおかしな声を聞いたような気がするけれど、気のせいだろう。急がなきゃ。

再び食器棚の脇に這いつくばり、指先をスキマの奥にはわせようとしたリーズ。

「俺が落としたのは、ごく普通の使い込まれたステンレス製スプーンですよっと……」

さっきのは気のせい気のせい、と念じつつ、何の気なしに呟いたリーズの耳に、また小さな女の子の声が聞こえてきた。


『へえー。正直な人!あたし好きだな!』

『あっ、あたしだって好きだもん!』


再び固まるリーズ。


『『あなたに、あたしたちを、あ・げ・る!』』


リーズの手のひらには、いつのまにか金・銀・ステンレスと、3本のスプーンが握られていたのだった。

  *  *  *

3本のスプーンのうち、ステンレスのスプーンは制限時間ギリギリで引き出しに戻した。
しかし、金と銀のティスプーンは『ねえ、あたしたちを、あなたの胸のポケットに入れて?』とおねだりしてきたため、放心状態のリーズは、請われるままにその小さなスプーンを、シャツのポケットに入れて持ち帰ってしまった。

会場チェックが終わり、食堂には、次のチームが勢い良く飛び込んでいく。
一家はわいわいと成果を確認しながら、自分たちのねじろである部屋へ戻ろうとしていく。
しかし、リーズはついていかなかった。

意を決し、食堂脇の廊下に机をかまえてゲームの採点をしていた頭領に、おずおずと近づいたリーズ。
頭領は、一瞬ビクッとして頭を上げ、眼光を鋭く緑の瞳を光らせながら「リーズ、昼飯の後でそいつらもって俺の部屋にこい」と言った。
どうやら何も言わなくても、すべてお見通しのようだ。


その後、頭領の部屋。
リーズはこの砦で産まれ育って22年目にして、憧れの頭領の部屋への入室を許された。

「おまえ、面白いもの見つけたなあ」

リーズが差し出した、金と銀のスプーンを見て、頭領は大きく肩を震わせて笑った。

『王様なんで笑うのぉ?』
『あたしたちなんか変なことした?』

金と銀のスプーンが、頭領のデスクの上でコロリ転がりながら訴える。
どうやらスプーンの声は、ここにいる頭領と自分しか聞こえないらしい。

食堂を出る際「あんた結局、1つも見つけられなかったんだねえ、まったく頼りにならない子だよ」と、おかみさんにイヤミを言われたとき、

『うるさい、ばばあ』

とスプーン達が言ったため、リーズは張り手の1つや2つを覚悟したが、その言葉はおかみさんには聴こえていなかったようだ。

コロコロと動くスプーンを見ながら、リーズは小さい頃にオヤジさんから散々聴かされた「親の言うこときかない悪い子にはお化けが出るぞー」という台詞を思い出した。
いや、でも、これは怖くないしと、リーズはすぐにお化け説を却下した。

頭領は嬉しそうに、穏やかに微笑んでいる。
こんな表情は、盗賊の女が出産したとき、名前をつけるために赤ん坊を抱き上げる顔と同じだ。
リーズは不思議に思い、頭領に問いかけた。

「あの、頭領、このスプーンは一体……」

「ああこいつらは、光の妖精の子どもだ。双子みたいだな」

妖精は、いくつのも精霊が集まり長い時間をかけて融合し、一つの意思を持ったときに生まれる貴重な存在だ。
小さな人に似た姿で、とても小さく、背中に羽が生えていると、子どもなら誰もが御伽噺に聴かされる。
精霊の森には、それなりの数が暮らしているのだが、森を出ると力が弱くなるため、めったに森の外には出たがらないはずだったが。

「なぜおまえら、こんなところでこんな姿に?」

くつくつとおかしそうに笑いながら、頭領が尋ねる。

『あのね、ちょっとだけ探険しようと思ったら、迷子になっちゃったの』
『疲れて消えちゃうとこだったけど、ちょうど居心地良さそうなスプーンがあったから入ったの』
『そしたら、空も飛べなくなって、どこかに運ばれて、だれもあたしたちに気付かなくて』
『誰かの口にいれられるのやだし、上手に転がって、暗いところにずっと隠れてたんだよね』

小さなスプーンの大冒険話に、頭領は珍しく声をあげて笑った。
2本のスプーンも、くすくすと笑いながら、スプーンの柄を下にして、デスクの上に立ち上がった。
金銀2本のティスプーンは、くるくると回りながら光を放ち、楽しそうにおしゃべりを続ける。

『でも、それからだれも見つけてくれなくて、ふたりでおしゃべりして遊んでたの』
『あたしたちの声ちっちゃくて、すごく近づいてくれないと聴こえないし』
『そもそもあたしたち、人と話すの難しいしね』
『少しでもうそついたり、悪いこと考えるひとには、あたしたちの声聞こえないのよ』

そこまで話すと、スプーンの妖精は、くるりとリーズの方へ凹み部分を向けた。
やはり、アレが頭で、アソコが胴体、凹んでいる側が表なんだなと、夢見心地でリーズはスプーンの動きを見つめた。

『そしたら、初めてあたしたちの声、聞いてくれるひとが来たの。うれしかったあ』
『やっと連れ出してもらって喜んでたら、王様がいたからびっくりしたよね』

スプーンの妖精から、王と呼ばれる頭領。
頭領は、リーズに鋭い視線を向けると「この話は聞かなかったことにしろ、いいな」とささやき、リーズは夢見心地のまま、こくこくと何度も頭をふった。

そんなリーズの姿を見て、金と銀のスプーンは、キラリと顔(ヘラ部分)を輝かせた。


『ずっと森に帰りたいと思ってたけど、あたしダーリンとしばらくいるー』
『あっ、あたしも、あたしもー。ダーリンと一緒がいいっ』


ダーリン。

特別に好きな異性を意味する言葉だということは記憶にあるが、今まで人間の女からもそんな甘い言葉をささやかれた経験はない。
ああ、なぜ俺は、2本のスプーンからダーリンなどと呼ばれているのだろう?


『あたし、もっと遠くに連れてってほしいな。いろんなものが見てみたいの』
『うん。そしたらお礼に、あたしたちの力使わせてあげるよ?』
『今はスプーンから出られないけど、力はけっこう強いんだから、ね?王様?』
『王様、あたしたちの名前、ダーリンに教えてあげてもいい?いいよね?』


リーズはぽっかりと口を開けて、スプーンのくねくねした恥ずかしそうな動きを見つめる。
全身からは冷や汗が吹き出て、じっとりと衣類が濡れていく。
頭領が好きにしろと苦笑すると、スプーンはまた嬉しそうにくるくる回った。


『あたしキーン。おねえちゃんだよ』
『あたしギーン。いもうとなの』


そのまんまかよ、とツッコミたいところだったが、あまりの展開にリーズはただこくこくと頷くしかできず。


『敵をやっつけたいときは、心の中であたしの名前を読んでね?』
『ケガとか病気のときは、あたしの方だからね?』


はい、わかりました……


『あたしたちがいれば、ダーリンは人間だと最強なんじゃないかな?』
『よかったね、ダーリン。これでもうばばあに文句いわれないねっ』


はい、よかったです……


こうしてリーズは、下っ端男改め、人類最強魔術師となって、サラの旅のお供に加わることになったのだ。

人生何があるかさっぱりわからないもんだなぁと、かなりの長い間砦の盗賊たちは、リーズの華麗なる転職について語り合った。


そしていつしか話がうまいこと捻じ曲がり、砦の大食堂スプーン食器棚正面の壁には『金と銀のスプーンを従える偉大な魔術師リーズ』の絵画が飾られることになったのである。


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【後書き】↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたい方のみ反転を。
(携帯の方は「テキストコピー」でたぶん読めます)
どーでしょう、この王道っぽいオチ。イイヒトは最後むくわれると信じたい小市民の夢です。スプーンズには別の名前もあったんですが、いつか某有名台詞を言わせたいと思ってこの手抜きネーミングに。
次回から、そろそろ旅出発方向へ進めようと思います。別れ際アマッ……かも。



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~ Comment ~

1 ■第一章読み終えました! 

こんばんは。虎乃羽です。
第一章読み終えました!テンポよくとても読みやすかったですよ!後書きも楽しかった(笑)

サラの健気なとことか、爆弾発言しちゃうとことか
すごく愛着がわきました。27回キスしてなんてまー!!
そう言っちゃうほどジュートはかっこいいですね~。これからの二人に期待!悲しい結末なんて吹っ飛ばせ!って感じで続きも楽しく読ませていただきマース!!

2 ■Re:第一章読み終えました! 

>虎乃羽さん

コメントありがとうございます!
主人公を好きだと言っていただいた上に、後書きまで……嬉しいです。(/_;)

主人公の爆弾発言は、プロットのメインです。(笑)
あの台詞を言わせるために、シチュエーションが後から肉付けされます。
一方、ラヴは書きながらテキトーに転がして……27回は、本当にもう……。orz

悲しい結末フットバスべく、頑張って続き書きますので、また遊びに来てくださいねっ。
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