喉ニ小骨ガ

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「砂漠に降る花」
第一章 異世界召喚


閑話2 ~ある下っ端盗賊の、華麗なる転職(前編)~

2009.04.13  *Edit 

【前書き】第一章終了後(あのちゅー直後)、盗賊さん視点のところからスタートです。


「いいかい?1つたりとも見逃すんじゃないよ!」

サラいわく”おばちゃん”こと、一家を仕切るおかみさんが、ぷよっと太い腕を胸の前でくみ、屈強な男たちを前に声を張り上げる。
一家の男たちは『オー!』と気合いの入った声をあげる。
周囲の期待がどす黒い魔力となってにじみ出て、ずしんと肩にのしかかり、下っ端男ことリーズは1人ため息をついた。

  *  *  *

ここは、砦の大食堂。
今朝行われた、頭領による演説は、盗賊たちに今までにない興奮を巻き起こした。
現在も、その興奮が収まらない、いやさらに拡大中だ。

定期的に行われる集会は、盗賊たちが腕相撲トーナメントと並んで、もっとも楽しみにするイベントの1つ。
集会で語られる頭領の話は、とにかく面白い。
今までのテーマはといえば「新たな面白い商売のネタ」やら「戦闘で相手に隙を作らせるコツ」やら、はたまた「女を(または男を)喜ばせる○○」やら……

本来集会への参加は任意だったが、話を聞き逃すと聞いたやつらの何倍も遅れをとってしまう。
しかも、憧れの頭領の近くで、あの美しい顔をまじまじと見られる上、稀に話しかけられるラッキーな奴もいるとなれば、行かないバカはいない。
今じゃ盗賊たちは男も女も子ども関係なく、見張りと病気のやつを除くほぼ全員が参加する、でかいイベントだ。

しかし今回の集会は、かつてない衝撃的な展開だった。

あの頭領が……

「星の数ほど女の心を奪ってきたが、女に心を奪われたことは1度もねぇ」と豪語し、あらぬ欲を持った女が近づけば、氷のような視線一つで2度と近寄ろうという気を起こさせないほどのトラウマを与えてきた、あの頭領が。

ついに、たった1人の女を選んだのだ。

呆けたままの表情で、仲間2人に支えられながらふらふらと退出する彼女に、盗賊たちは一斉に『姐さんー!』『姐ごー!』と大声援をおくり、姐さんは顔を真っ赤にしてうつむくと、脱兎のごとく逃げていったっけ。

確かに姐さんは、おかみさんと同じ人間とは思えねえくらい、べっぴんさんだったけどさ。
どっちかってーと俺は、もう一人のコの方が……
リーズはぽっと頬を赤く染める。

あのコ、本当に可愛かったなぁ。
大きな目がうるうるしてて、下っ端パシリな俺のことも怖がっちゃうくらいおびえてて。
だっこして運んだときも、めちゃめちゃ軽くてやーらかくて……
男としちゃ、ああいうコ、守ってあげたいよな。
でもこれから、旅に行っちゃうんだよな。
また、会えるかな……

「なにやってんだい!早く行くんだよ!」

リーズは、おかみさんの張り手で夢(妄想)から覚める。
すでに開かれていた食堂のドアを見ると、慌てて飛び込んだ。

これから始まるのは、頭領が考えた最高にエキサイティングなゲーム。
リーズは、仲間から期待を託された、選ばれし勇者だった。

  *  *  *

ときどき頭領は、俺たちがワクワクするような遊びを考え付く。
姐さんたちがトリウムへ出発する準備のため退室した後、興奮冷めやらぬ俺たちは「おいてめーら、今日は昼まで仕事はやめだ。面白いゲームでもしようぜ」という頭領の言葉に、大きな歓声で答えていた。

「今回は、早いもん勝ちの宝探し。お宝は、今ここにあるコイツだ」

そういって、頭領は左手に掴んだ姐さんの髪の束を頭上にかかげた。
魔力がそれなりにある男たちはもちろん、魔力が微量しかない子どもにも見えたはずだ。

恐ろしいほどの光の粒。
いわゆる光の精霊たち。

黒髪そのものが光を放っているように見えるほどだった。
精霊たちは黒髪にもぐりこんだり、滑らかな表面を転がったり。
光の粒が、楽しそうにまとわりつきながら、キラキラと白く透き通る光を周囲に振りまいていた。

「こいつを懐にいれとくだけで、光の精霊の加護がうけられる。こりゃ面白いお宝だろ?」

その瞬間、会場内は殺人的な熱気につつまれる。

『欲しい……』
『欲しい……』
『欲しい……』

特に魔力が少ない者たちが、お宝を見つめ、瞳をぎらつかせた。
魔力が少ない者ほど、杖や指輪など魔力を増やすアイテムに対して貪欲だからだ。
まあ、中にはリーズのように「別に魔力少なくても、楽しく暮らせりゃいいや」という根性無しもいるのだが。

しかも、光の精霊のマジックアイテムなんてしろもの、レアなお宝探しが大好物の盗賊たちも、誰1人として見たことも聞いたこともない。

人間は、炎をランプに閉じ込めたり、水を桶に汲んだりはできる。
しかし、決して光を捕まえることはできない。
夜が来れば、全ての光を手放し、次の朝日を待つしかないのだ。
大陸のずっと遠くには、自ら光を放つという虫がいて、光の精霊の使者と大切にされているらしい。

人にとって、光は神の恵みであり、空を守る女神の化身だった。
そして、魔術師にとって、光を操ることは永遠の憧れだ。

光の精霊は力が強く、よほど力のある魔術師以外の命令はめったに聞かない。
光を放ったり稲妻を作るような、比較的簡単な魔術でも、光の精霊に命令を聞かせるのは難儀だという。
リーズたち盗賊も、それを軽くやってのける頭領の純粋な力に心酔している部分もある。

魔術でさえ難しいのに、杖や指輪に閉じ込めることは100%不可能で、光はマジックアイテムにはならないというのが常識だった。
もしあるとしたら、相当のお宝だ。

実際、光のマジックアイテムが存在するという噂は、たびたび盗賊の耳に入る。
光の精霊は気まぐれで、美しい宝石など、気に入った素材に寄っていくことがあるからだ。
しかし、長く止まることはなく、すぐに別のどこかへ飛び去ってしまう。

今までに見つかった『光の精霊を宿す宝石』と言われた伝説のお宝は、すでに精霊が去ってただの宝石になっているものばかりだった。
それでも、過去に光の精霊が魅せられたというだけで、国宝級のお宝となる。

しかしこの黒髪は。
気まぐれな光の精霊を、あっさりと魅縛してしまったのだ。

世界で唯一の、光の精霊を封じたマジックアイテム。
そんな前代未聞のお宝出現に、大食堂はまさに興奮のるつぼだった。
頭領は、こりゃきっちりルール決めなきゃ死人が出るなと、苦笑しつつも公正な宝探しゲームの内容を示したのだった。

  *  *  *

今回のゲームのルールはこうだ。

まずは、魔力の少ない子どもと、普段食堂で働く女たちが、それぞれの家族から一時抜けて、せっせとお宝作り。
「聖なる光の髪」(俗称:姐さんの黒髪)と名づけられたその髪を、小指の半分ほどの太さに小分けして編みこみ、1本の紐状にして、黒い小さな布袋に入れお守りの形にした。
普段身につけているだけでも使えるが、より大きな魔術の際は袋から取り出し、杖や手首に巻いて使う。

これが、合計100個も作れたらしい。
それらを、食堂内のどこかに隠す。

現在30組ある一家が、チームの単位となり、制限時間内に宝探しをする。
見つけたものはすべて持ち帰れるが、家族内でどう分配するかは、一家のルールで決める。
くじ引きでもよし、バトルでもよし、オヤジさんやおかみさんの独断で、落としたい女(または男)にやるでもよし。
30組が探しても見つけ出せなかったお守りがあれば、隠した側の女と子どもたちへ配られるため、隠す側も必死になる。


お守り作りの間に、一家の中からゲームに参加する代表5名が、話し合いによって選ばれる。
一家の代表であるオヤジさん達は、宝探しの順番を決めるために一度別室へ。

順番を決めるのは、いつもどおり幸運のダイスだ。
オヤジさんたち30名で円をつくって座り、その円の中心に頭領が幸運のダイスを放り投げて、ゲームの順番を決める。
頭領によると、このダイスはいたずら好きの妖精が作ったものだそうで、今もっともツキがある者の方へ転がっていくのだ。

さっそく、1回目のダイスが投じられた。
ダイスは、ハラハラ見守る人間をからかうように、あっちこっちバラバラの方向にしばらく転がり続け……最後はリーズ一家のオヤジさん前にぴたりと止まった。
その朗報が伝えられると、リーズ一家のメンバー達は、歓声を上げながらオヤジさんの元に駆け寄り、興奮する犬コロのように抱きついた。

全ての組の順番が決まったところで、再び一家はねじろにしている部屋へ集合し、作戦会議。
各チームに与えられた時間は5分。
5人のメンバーで、できるかぎりのお宝をさらって、ルール違反がないかチェックされた後に、次の順位のチームにバトンタッチする。
順番が後ろになればなるほど、すでに見つけられてしまった分のお宝が減っていて、見つけるのが困難になる。

短い時間で、どれだけ多くのお宝を発見できるか?
5人のメンバー選びが、勝負の決め手だ。

食堂で働く女たちから「荒らされるのは勘弁」との意見が出たため、ゲームの基本ルールに「出したものは必ず元の位置に戻すこと」が付け加えられた。
もし出て行くときに、モノの位置が変わっていたら、そのチームの戦利品は没収だ。
さらに、乱暴に探されてモノを壊されるのも困るとなり、誰かが皿1枚でも壊した時点で、チーム全員の権利を剥奪するという、厳しい罰則つきになった。

大雑把でけして気の長いほうではない屈強な男たちにとって、そのルールは足かせとなる。
しかし、大きな鍋や重いテーブルの下に隠されるとなれば、か弱い女では難しい。
悩んだ男たちの視線が、じわりじわりと一点に集まっていく。

その視線の先には、リーズがいた。

リーズは魔力も武力も無い分、とにかく手先が器用で気がきく男だ。
一家の掃除洗濯繕い物から、雑用パシリ肩叩きと、戦い以外のあらゆることを引き受けるなんでも屋。
ひょろっとした体格と、温厚な性格で、いじられることはあるものの、とにかく頼まれごとは誠実にこなすため、一家の信頼も厚い。

女たちからも「ねえ、○○って私のことどう思ってるのかなぁ?」などと、良く恋愛相談を受けている。
女から見たリーズは、あくまで安心安全なお友達で、異性として意識されることはほぼないという悲しい状況だが、リーズはそこもまいっかと思っている。

リーズは器用だし、そこそこ力もある……
人の気持ちを察するのも得意だし、隠すやつらの気持ちも分かるに違いない……

そんな理由から、光栄にも満場一致で、リーズは宝探しのメンバーに選ばれたのだった。
しかし一家の面々は、彼がプレッシャーにひたすら弱いということを、すっかり失念していた。

  *  *  *

食堂へ飛び込んだリーズは、大食堂を右斜め奥へとダッシュしていた。
事前打ち合わせにより、リーズはもっとも重要な、食器の入った戸棚エリアの担当。
皿やコップを素早く移動させ、棚の奥や引き出しの中を探してみるものの、小さな黒い袋はなかなか見当たらない。
焦るほど動作が雑になり、腕を棚板にぶつけて、そのたび食器がガチャンと音を鳴らす。

「こりゃあ難しいぞ」

リーズがため息をついたとき、入り口ドアの方から「あと3分」の掛け声がかかった。
戦利品ゼロでは、おかみさんに何を言われるか……
ぶるりと体を震わせたあと、リーズはスピードアップのために、なるべく壊れにくいものが入った引き出しをどんどん探そうと決め、スプーンやフォークの置いてある食器棚に飛びついた。

そこで、焦っていたリーズは、小さなティスプーンを1本、床に落としてしまった。
カラン!と乾いた音を立てたスプーンは床ではねかえり、大きな食器棚の足の隙間から奥へと転がっていく。

リーズの顔色はサーッと青くなる。
全て元通りにするというルールにより、あの細い隙間のスプーンを取り出さなければ、一家は失格になってしまうのだから。
スプーン1本くらいなくなったところで、証拠を見つけるのは難しいのだが、この盗賊の掟である『ルールを破る者には死を』が徹底されているため、すぐに自己申告しなければ後で発覚したとき命はないだろう。

リーズは床に這いつくばり、必死で隙間の奥のスプーンに手を伸ばした。
ああ、こんなところで自分のひょろ長くて貧弱な腕が役に立つとは。
あとほんの少しでもリーズの腕が太かったら、または短かったら、その隙間の奥まで手は入らなかっただろう。

スプーンの感触を求めて、リーズは手のひらをぺたぺたと棚の下の床に這わせていく。
硬い金属質の棒が指先に触れ、リーズはそれを摘もうとした、そのとき。


『あなたの落としたのは、金のスプーンよね?』

『ちがうわよ、銀のスプーンだったら!そうでしょ?』


棚の下の奥から響いてきた小さな声。

逃げ足だけは早いリーズは、その瞬間、腕を引いて食器棚から飛びのいた。


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【後書き】↓次号予告&作者の言い訳(痛いかも?)です。読みたい方のみ反転を。
(携帯の方は「テキストコピー」でたぶん読めます)
さて、ようやく王道ファンタジー(だよね?)になってきましたよ。ピュアキャラ主人公が無意識に生み出す奇跡に一般人もう夢中……いいねー。どうやら頭領、サラちゃんの黒髪に一目惚れしたようです。その話はまたいつか番外編で。
次回、ダメダメな下っ端君がいきなり……さて、どこまでビッグになるか、乞うご期待。



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